「いやー、やっと終わって何より。結構時間かかったね?」
「にこにこしているところ悪いけど、その言い方だとまるで自分ならもっと早く終わらせていた、と言っているようね?」
終わったと報告がてらファントムに謝りに来てみれば、やっとかと溜息をつかれた。私だって溜息をつきたい。一応当事者だったわけだし、何度も殺されたのだ。ノイローゼにならなかっただけマシだろう。
「まあ、僕ならもっと早く終わらせてたよ」
殴りたいと思った私は悪くないはずだ。うん。
「男の方が使っていたのは空間を繰り返すことが出来るディメンションARM、ループ。本来なら終わりがあるはずの一本道を延々と繰り返したり出来るんだけど、それを時間に使うとは思わなかったよ」
「むしろファントムならそのくらい考えそうだけど、あのARMを与えたのは一体誰?」
「僕だけど?」
手が出かかったけど私は悪くない。
「それに記憶を操るARMと、人の姿を変えるARMを使っていたとはね。アオイの目の色が変わったり、髪の長さが変わったりしてたのはこれだろうね」
「でもあいつらのARMは全て破壊したけど、髪の長さは戻らないよ?」
「あれ?」
私の方が首を傾げたい。まぁ、大体は予測できるけれど。どうせ嫌がらせに髪を切ったのだろう。人の、しかも女の子の髪を切るなんてどうなんだ。誰かを異常なまでに愛するとそこまでしてしまうのか。怖いな。
「目の色は戻ったし、いいじゃないか」
「関係無いのに被害を受けて疲れたのは分かるけど、何もされてないファントムに言われても慰めにならない」
「ふふ……でもおかげでペタに告白できたし、付き合うことになったんだからよかっただろう?」
「それは……」
繰り返されなかったら告白なんてしなかっただろう。告白しようだなんて思わなかったはずだ。ペタに私の気持ちを知っていてほしいとすら願うことも無かっただろう。そう思うと、ほんの少し……爪の長さくらいは感謝してあげなくもない。まぁ怒りは私の全身から倍くらいの量だけど。
「これで漸く次の一週間に進めるね」
「随分と長い間、同じ一週間を繰り返させてしまったから知り合いくらいにはお詫びをしようと思ってる」
「そんなことしなくても皆理解してくれると思うよ。君は愛されてるからね」
そう言うファントムは目を細めている。それが繰り返していた状況を楽しんでいたのか、それとも私をただ単にからかっているのかは分からないけれど、今のファントムに真面目なことは何も聞かない方がいい。聞いたところでちゃんとした答えなんて返ってこないのだから。
「私が皆に愛されてたらファントムはどうなるのよ」
「さあね?」
「私はただ一人に愛されればそれでいいよ」
「そう言うと思ったよ。君らしいからね」
とりあえず今回の繰り返した原因は、私が憎まれたこととファントムがARMを与えたこと、と言うことにしよう。と言うかまさにそのままなのだけれど。お詫びとお礼を兼ねてロランとキャンディスにはご飯でも作ろうか。ちゃんと一週間過ぎ去ったら。
end
2013.10.04
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