「これが繰り返していたARM……何だか憎たらしい形状してるように見えるわ」
「散々繰り返されたんだ。そう思っても仕方あるまい」
手に取ったARMを床に落として踏みつける。金属特有の砕ける音が聞こえて、次には消えて無くなった。彼らが持っていた全てのARMを同じように消していく。恐らく私達の記憶を操ったと思われるそれも、私の目の色を変えていたであろうそれも。ARMの名前も知らないし、ARMの能力の体験者だけど目の当たりにしたわけじゃないし何だか少し勿体ない気もしたけれど、私じゃこのARMを使うことも無いだろう。
「ねえペタ。ペタはいつから私のこと好きだったの?」
「さあ、いつだったかな。何度も繰り返したせいでそんなこと忘れてしまった」
とぼけられてしまった。私がペタをどうして好きになったとか、そういうものを聞かれたら困るのと同じだと分かってはいたのだけれど……それでも聞いてみたいと思うのは仕方ないと思う。だってペタは決して私を見ないと思っていたから。それでも仕方ないと思っていたから。
「私もそうだけど、結局そう言うのって心の奥底で覚えているものらしい。夢に見るとか、一瞬過ることで思い出すことがあるの」
「ほう。では、お前がどうして私を好きなのか答えてもらおうか」
これはペタからの意地悪なのだろう。私を困らせて、この先「いつから好きだったのか」なんてもう問わせないようにしているようだ。
「ペタだったからだよ」
「は?」
「ペタだったから好きになったの。どうして好きなのか、なんてそんなものだよ」
一緒にいるだけで幸せ。私の気持ちなんて伝わらなくてもいい。だからこの気持ちを伝えるつもりは無い。なんて言っていた過去の自分は本当に馬鹿だ。口にしなければ伝わらないことなんて山ほどあると言うのに、何も言わなくても分かってもらえるなんて思っていたのだろうか。もしくはあわよくば、なんてこと考えていたのだろうか。
とにもかくにもただの愚か者だったのだから、今の私が昔の私を見たら思いきり笑い飛ばすことだろう。
「言ってみるものだね」
「何を?」
「自分の気持ち」
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