あなたが好きなのです | ナノ

「んー!」

大きく伸びをして、漸く終わった書類を纏めるとトントンと机で綺麗に揃える。結局自分の部屋で作業することにしたけれど、ペタがいなかったおかげか作業が捗った。これをペタに届ければ今日の仕事は終わりのはずだ。明日はこれにプラスしてARMの調達をしなければいけないなんて私を過労死にでもさせる気だろうか。あぁそれを考えるとペタはもうすぐ過労死してもおかしくないな。

「あの人ちゃんと休憩してるのかな……」

何となく心配になって足早にペタの執務室に向かった。


「思ったより早かったな」

「うん」

いつも通り、書類に目を通しておかしな部分が無いか確認するとそれを机に置く。そして御苦労と一言だけ言うと終わり。

「ねえペタ」

「何だ?」

「ARMのリストアップや、村や町の情報を纏めるのは分かるんだけど、書類整理ってそれ程必要な仕事なの?」

「ただでさえ無法地帯だと言うのに何の情報も無く破壊活動などすれば余計なことをするだろう。何せ纏め上げているのがファントムなのだから」

それもそうだ。こうしてペタがやり過ぎないようにストッパーとなるだけで大分違うのだろう。まぁただ単に一気に片付けてしまうのはつまらないと言う考えなのかもしれないけれど。

「今日の仕事はもう終わりのはずだ。あとは好きにするといい」

「うん。じゃあまた明日ね」


ペタへの違和感は無くならなかった。むしろだんだん増していく。一人で作業していると捗った、なんて思っていたけれど何度か脳内にペタの顔が過ったし今日の私は変だ。ペタが最初量の少ない仕事を任せてきたのと同じくらい。何だかんだずっとペタのことを考えているし、これじゃあまるで私は……

「ペタに恋でもしているかのよう……」

自分で言ってて吃驚した。いやまさか、そんなはずがない。接点なんて書類整理以外に無いし、すれ違えば挨拶をする程度で特別仲が良いわけでもない。でも私がペタを好きだと思っているのなら、今日ずっと感じていた違和感がしっくりくる気がする。私はずっと同じチェスの兵隊で、ただの上司みたいな関係だと思っていた。だけどそれに違和感を覚えていて、私がペタを好きならしっくりくる。

でも私はどうしてペタが好きなの? さっき言ったけど特別仲が良いわけじゃない。私はビショップで彼はナイトだから憧れでも抱いていると言うの? それとももっと別のきっかけでもあったのだろうか。全然思い出せないけど。

「ねえ」

「え?」

後ろから声をかけられたと思えば、視界に銀色の刃物のようなものに赤い液体がついているのが見えた。まだ黒くなってないから付いたばかりなのだろう。なんて呑気に考えていたら視界が斜めになっていった。


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