「強制終了、か……」
まさか殺さずに繰り返すなんて思わなかった。あそこで強制終了して一体何を考えているのやら。ペタに殺されるわけでも無く、私が殺すわけでも無く、私が殺されるわけでも無い。あの人は一体何を望んでいると言うの? まさか、この繰り返される世界が好きだとでも言うのだろうか。それともこの間だけ、ペタは私の気持ちを知りながらも知らないフリをするからだろうか。
どんな理由であれ、結局私を何度も殺すことに変わりは無いのだろう。そうしてまで私を憎んでいる彼女は、何度だって、どんな手を使ってでも私を殺しに来るはず。
「ふふふ……」
私は決めたんだ。何度殺されようと、何度繰り返されようと、ペタに告白し続けるって。こうしてまた繰り返したところで私の決意は変わらない。今日もまた歩きながらパンを食べて、中身を飲み干した空の瓶片手にペタの部屋に行こうじゃないか。
決して喧嘩は売らないし、売られた喧嘩は買わない主義だけれど、今回ばかりは売られた喧嘩を買ってやろう。だけど私ばかり売られるものを買うのは癪だ。今度は私から喧嘩を売ってやろう。人を煽るのはあまり得意じゃないけれど、まぁ何とかなるだろう。
「あの、歩きながら食べるのは行儀が悪いと思います」
「ごめんなさい。急ぎの用があるの」
二回目だからか、廊下ですれ違うロランが話しかけてきた。確かに歩きながら食べるのはマナー違反だろう。立食なんていう言葉が存在する世の中だけれど、立って食べるのと歩きながら食べるのとでは意味が違う。しかし言われてやめる程私の神経脆くできてないから、ロランには悪いけれど例え食べ物を零しても無視をさせてもらう。個人的に食べ物を粗末にするのは物凄く嫌だけれど。
「そこまで頑張るんですね」
「え?」
「ペタさんのことで、そこまで頑張れるのは本当に好きだから……ですよね?」
「ロラン……」
「羨ましいですよ」
「ロランだってファントムの為なら頑張れるでしょう? それと同じよ」
気持ちまでが同じとは限らないけれど。
「やっぱり食べる時は止まった方がいいと思います」
「次から気を付けるわ」
まさかロランが記憶を戻していたなんて。一度戻すともう消えることは無いのだろうか。あぁもう、それを確かめる術なんて私には無いのに。ARMの能力について考え込んでしまうのは悪い癖だ。今はただ、ペタのことだけ考えていよう。
同じように執務室に行ったとして、また同じように強制終了されたら同じことの繰り返し。なら別の場所へ行けばいい。どうせどこにいたってあの人は現れる。
「おはよう」
「まさか、私を待ち伏せしていたの?」
「えぇ。あまりにも喧嘩を売られすぎて有り余ってるんで、売ってしまおうと思ったの」
「へえ……それで、それは一体どんなものなのかしら」
「そうね。人によっては苦しいものかもしれないね」
でもあなたなら、苦しくはないでしょう?
出来過ぎた日々に笑う2013.09.18
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