「どうした?」
平然を装うのは、私がまだ記憶を取り戻していないと思っているのだろうか。前に気付いているとばれた時も、私は明確に記憶が引き継がれているなんて言ってないしそれも仕方ない。
だけど私は構わず口を開く。言わなければ伝わらない。言わなければ意味が無い。傍にいられるだけで幸せなんて、きっとあの頃の自分は本当にそう思っていたんだろうけれど、今の私は違うから。今の私は欲張りになってしまったみたいに、ペタに私を見てほしい。私の気持ちを受け取ってほしい。その後捨ててもいいから、私が好きだと言う事実を知っていてほしいんだ。
「私はペタが好き」
きっと好きって言葉じゃ言い表せないくらい。きっとどんなに好きって言っても言い尽くせないくらい。
「好き。大好き。好きなの」
「おい……」
「別に私を好きにならなくてもいい。私と言う存在を忘れないでほしい。私にまだペタを好きでいさせてほしい。好きだって忘れないで」
まだ、まだ言い足りない。だけどこれ以上はきっとペタを困らせてしまう。迷惑をかけてしまう。だからもうすぐ来るであろう人に私はまた殺される。
「殺されたいわけじゃないんでしょう?」
まさか刺されるわけでもなく、首を絞められるわけでもなく、毒を撒かれるわけでもなく、殺されるわけじゃなくてただ話をしてくるなんて思わなかった。私には彼女がどういった人物なのかまだ知らない。私を殺したい程憎んでいることしか知らないから。
「今まではあなたが殺されたいようだったから殺してきたけど、今はもう殺されたいわけじゃないようだからすぐには殺してあげない」
「あなたは……」
「薄々気づいていると思うけど、私はあなたが大嫌いで、憎んでいて、この世から消えてしまえばいいと思ってる」
わざわざそんなこと言う為だけに出てきたわけでも無いだろう。
「私の愛は異常だから、きっとペタへの愛情もあなたへの憎悪もそこからくる異常なまでのそれなのだと思う。でもね……ううん、だからこそ……こんな私を愛してくれると思ったのよ」
私を憎む理由として、彼女がペタを好きなことは明白だった。人が異常になる程の理由なんて好きな人や物以外には考えられない。勿論、それ以外にもあるのだろうけれど、きっと彼女は私と同じでペタが好きなのだと感じていた。
「謝らないわよ。あなたを殺したことも、何度も繰り返したことも。そして私はあなたへの憎しみでまた、あなたを殺すわ」
彼女の魔力だろうか。彼女からペタへの気持ちや、私への憎悪が伝わってくる。それと同時に少し切ない、彼女が自分自身に感じている感情さえも感じ取れてしまう。こんな能力私には無かったはずなのに、危機的状況で神経が研ぎ澄まされているのか、或いは気のせいというやつなのか。それを判断する余裕も無く、攻撃してきたそれを躱すしか出来なかった。
「お前が殺せば私はまたお前を殺すことになるが、それでも殺すのか」
「えぇ。そしてまた繰り返すのよ。同じ日を、何度も何度も」
「ならここで、私がお前を殺せばどうなるんだろうな」
ペタが自分のARMに手をかけたところで、彼女が笑ったように見えた。まるでそれを望んでいるような、待ってましたと言わんばかりの笑みだ。
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