「あー! アオイ発見したニャ!」
「シャトン……発見って、何か用事?」
「なんかよく分からないけど、キャンディスが呼んでたニャン」
「キャンディスが?」
呼ばれたのなら行かないわけにもいかない。行った部屋にペタやファントムがいなければいいけれど、何か話でもあるのだろうか。
あれ? 繰り返した後の私ってとくに仲良くしてる人はいなかったはず。仲が良かったはずのロランとも面識が無かったくらいだし。でもシャトンは当然のように私を見つけて私の名前を呼んで、今だってニコニコしている。彼女はそう言う性格だと分かっているけれど、もしかして全員の記憶を完全に弄ることは出来ない、ということだろうか。
いや、むしろどうして今までそれに気付かなかったのか。ファントムやペタといったナイトクラスなら人数も決まっているし、それに私を足しても記憶を操る範囲内だとすればそれ以上は難しいということになる。いや、人数が増えれば増える程効果が薄れていくとするなら、チェスの兵隊全員の記憶を操るなんて無理な話だ。もし記憶を操る、繰り返すという現象がARMによって行われているのなら尚更。
「アオイ? どうかしたのかニャン?」
「いや、何でも無いよ。わざわざ伝えにきてくれてありがとう、シャトン」
私がそう言うと嬉しそうに笑う。本当の猫みたいで可愛らしい。こういったやり取りに少し懐かしさを感じてしまった。
「アオイ、あなたやっぱり目が変だわ!」
「は?」
呼び出されたから来てみれば、顔を合わせた途端意味の分からないことを言ってきた。一体何の話だろうか。
「ずっと気になってたのよ。アオイの目が変……いいえ、むしろしっくりくるって」
「それなら問題無いじゃない」
「そうじゃなくて、今までが変だったと言うか……私にもよく分からないんだけど、今までずっと違う色を見てきた気がするのよね」
そもそも、今の時点でキャンディスが私を親しく話していることは気にならないのだろうか。今回の呼び出しだって不思議で仕方なかった。
「何だかおかしいわ。この間も、初めてのことが前にもあった気がしてならなくて」
「それは……」
あっちの魔力が弱まっているのか、或いは何度も繰り返したせいでこちらに耐性でもついたのか。
「よく考えれば、私とアオイはちゃんと話したの、初めてな気がするのに」
「私も違和感だらけだよ。まるで何度も同じ日を繰り返しているようで」
そう言ってみると、キャンディスはハッと何かに気付いたように顔を上げた。そして何かを言おうとしたが、それはいつの間にか部屋に来ていた人物に遮られてしまう。
→次
:
back :