あなたが好きなのです | ナノ

「実は結構難しい場所でね。ロランと行ってもらおうと思ったんだけど、危険だしペタの気分転換も兼ねて二人で行ってもらおうと思って」

「ペタの気分転換についてはファントムが仕事すればいいだけの話だと思う」

「酷いなぁ。まぁとにかく頑張ってきてね」

「あ、ARMの調達に行くのは決定なんだ」

この人は笑顔を浮かべながら逆らうことを許さないから質が悪い。しかしそれに従うのがペタだし、そんなペタに従うのが私だからこの連鎖はどうにもならないのかもしれないな。


「最近夢見が悪くてな」

「へえ。疲れてるんじゃない? いつも仕事して、過労死も近いと思うよ」

「不吉なことを言うな。私はファントムが世界を浄化するまで死ぬことはない」

相変わらずファントム大好きなんだから。いつだってそうだった。

「そういえば、悪夢は人に話すと正夢にならないらしいよ」

「本当かどうか怪しいな。元々悪夢など正夢にならないのかもしれないだろう」

「そうかもね。私も正夢にならないのは嘘だって思ってるよ」

「そうか」

だってどんなに悪夢を誰かに話したって、その悪夢は正夢になってしまうもの。ちょっとずつ違うところがあったとしても最終的なものは同じだ。

「誰かついて来てるな」

「そうだね。でもまぁこんな森の中だし、あっちが勝手に迷子になってくれるよ」

「それもそうだな」

「そういえばペタ」

「なんだ?」

「なんか、息苦しくない?」

進めば進むほど眩暈がしてくる。ペタは平気そうな顔で立っているのに、視界が歪むのは私だけなのだろうか。あぁそうか、また正夢になったのか。今回は何だろう。

「私にしか効かない毒なんて……器用な真似するじゃないの……」


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