「ファントムは何故お前をARMの調達に行かせようなどと思ったのだろうな」
「それは私が一番知りたい」
書類を抱えて目指すはファントムの部屋。簡潔に纏められたそれをファントムに見てもらう為に二人で運んでいる。私は書類整理の仕事が終わったから、ARMの調達に行く為にファントムと話さなければいけないから向かっているというのもあるのだけれど。
「しかもロランと同伴とは……」
何だかペタがやけにイライラしているけれど、それはあれか。ファントムから与えられる仕事は全て自分が引き受けたい、と。いや、ペタにファントムへの恋愛感情的なものは無かったはずだ。ロランって言う人は噂で聞く限りじゃかなりのファントム信者だけれど。
「いっそファントムが女性だったらよかったのに」
「何を言っているんだ。お前は」
そんな信じられないものを見る目で見ないでほしいんだけど。それに、私はファントムが女性なら諦めもついたのになって思っただけであって決して私が女性をそう言う目で見ているわけではない。だから小さく「お前、まさか……」なんて呟かないでほしい。
「私の恋愛対象はちゃんと男性だから。それにもし私がそう言う趣味だとしてもファントムは好きにならないよ」
「ほう。お前にはファントムの良さが分からない、と」
「ペタ、本当はあなた、ファントムのこと恋愛感情的な意味で好きなんじゃないの?」
そう言ったら流石に頭を殴られた。女の子の頭殴るなんて、男としてどうなんだと問い詰めたかったけれど目の前にファントムの部屋の扉が近付いてきたから文句は全て飲み込んだ。
「ペタはさ、ファントムが女性だったら好きになってた?」
「さあな」
ペタは多分好きになってたと思う。だけど敬う気持ちと同時に生まれただろうから自覚することなんてなくて、結果的にファントムは別の人を好きになったりするんじゃないだろうか。それにペタは呆れながらも協力する。そんな図が浮かんでしまった。
「私は、ペタが女の子になっても好きになれる気がする」
届くか届かないか、そのくらい小さな声で言えば扉を開けようとしたペタの動作が止まった気がした。そして少し驚いた様子で振り返ると、その途端目を見開く。私の後ろに何かあるのか、視線は私に向けられてはおらず、そこに誰かがいたのだと気付いたのは背中に衝撃が走ってからだった。
「ばいばい」
倒れながら見えたのは、人形なんじゃないかと思うくらい表情のない顔をしている女の子。
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