なんて愚かな人達
※レオとロキが双子の兄弟設定で現パロ
「好きだよ」
そう言って心底幸せそうに笑うから、私はきっとこの関係を終わらせることなんて出来なくて、いつまでもズルズル引き摺っていくのだろう。
今だって彼からのキスを受け入れて、頭の中であっちにもしなきゃいけないのかと考えている。嫌だと思わないあたり私も大概か。でも、誰もいないからって学校の裏庭でキスをするのはやめてほしい。
きっかけは中学生の時、幼馴染二人に突然告白をされた。二人のことは好きだったけど、それが恋愛感情かどうかまでは分からなくて、そのことを素直に伝えたら二人は笑って言ったのだ。『じゃあ二人同時に付き合ってよ』と。
意味が分からなかった。どうして二人同時に付き合うという発想になるのか。何より、それって所謂浮気とか二股とか、そういうことだろう。どうしていきなり私が悪女みたいにならなければいけないんだろうか。
それでも私は二人が好きだったせいか、二人の強い押しに断りきれず、高校生になった今もその関係が続いている。
面倒なのは、片方とキスをするともう片方ともしなくてはいけないこと。片方だけでは狡いだの何だの言って喧嘩になる。一度片方だけとキスをして殴り合いの喧嘩をしていた。私はあれ程醜い喧嘩を見たことがなかったし、これからも見ない自信がある。
あれを見て以来、どちらか片方だけ、というのはないように気をつけている。
「ロキには内緒ね」
そう言って口元に人差し指を当ててくる男に、この前それで喧嘩になったことを忘れたのかと言ってやりたい。
彼らは双子だった。一卵性双生児で、双子特有のテレパシー? シンパシー? まあそういったものがあるのか、見ていなくても片方が何をしているか大体分かるらしい。
例え目の前の男――レオが内緒だと言っても、家に帰ったらロキはそれに感付いていてキスをねだってくるのだ。
逆も然り。ロキが内緒でキスをすれば、レオがそれに感付いてキスをしてくる。最早この二人が何をしたいのか分からなくなってくるし、何よりほぼ毎日キスをしなければいけない私の身にもなってほしい。
「どうせロキにばれるのに?」
「でも内緒って、なんか興奮するだろう?」
双子からの求愛とか、そういうものはフィクションの世界だけだと思っていた。小説やドラマで出てくるような、そんな都合のいい設定なんて実在しないのだと思っていた。
まさか自分が、幼馴染の双子から求愛されて、二人同時に付き合うことになるなんて誰が予想できただろうか。少なくとも私は予想どころか二人が私を好きなことすら気付かなかった。
「またレオとキスしたの?」
私にファッション雑誌を持ってきたロキに聞かれ、素直に頷くとムッとした表情を浮かべた。いくら雑誌を持ってきても私はファッションにそれ程興味を抱けないのだけれど、ロキはめげない。
「本当、レオって手が早いよね。いつも内緒でナマエにキスしてさ」
ロキも同じだよ。と思ったが言わないでおいてあげよう。
私の認識では、ロキの方が遊んでいるイメージだ。私に付き合ってほしいと、レオと一緒に執拗に言ってきた彼だが、他の女の子をナンパしては遊んでいる。
「私、それより今日発売の小説の方が読みたい」
「たまにはお洒落してデートしようよ!」
「私のお小遣いは小説に費やされ、残りは貯金に回されるから無理」
「デートしてくれたら奢るのにー」
「奢る云々は置いておいて、お洒落のお金が無い」
それに、ロキとデートしたらレオともデートしなければいけないじゃない。二度手間だ。いっそ三人でデートすればいいのに、二人はそれを許してくれない。お家デートは三人でも許してくれるのに。
「まあ、今はデートのことはどうでもいいよ」
ああ、話を逸らせたのになあ。
「レオとキスしたんだろ? 狡いなあ」
物欲しそうな顔で見てくる。きっとするまで帰ってくれない。
「これでいいの?」
軽く唇に触れてから離れれば、満足してくれるかと思ったのに。ロキは少し笑って口を開く。
「まだ足りない」
「調子にのらないで」
「レオとはもっと長かったでしょ?」
「実は見ていたんじゃないの?」
「丁度旧校舎にいた時見た」
見ていたならそうと言えばいいのに、性格が悪い。いや、それはレオも同じか。多分ロキが見ていることに気付いていただろう。
「もっと」
「これ以上は無理」
「仕方ないなあ」
自分からするのは慣れないのに、二人からされるのは受け入れられる自分が意味分からない。
「長い……レオはそんなに長くなかった」
「いつもレオが先にナマエにキスをするから、後からする僕は長くてもいいじゃないか」
そしてそれが喧嘩の原因になることを何故彼らは分からないのだろう。いい加減にしてほしい。
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