まずはその残念さを直してこい
「破天荒って、見た目そんな風なのに性格とか全然チャラくないよね」
私がそう言うと、いきなり何だといった表情を浮かべてこちらを見てきた。いつ見ても鋭い目付きだ。もう少し柔らかい表情が出来ないものだろうか。
「急に何だよ」
「ふと思ってね。ピアスもつけてないし、ナンパしないし、むしろ女の子鬱陶しく思ってるし、チャラくないなぁって」
「だから何でそんな話になってんだよ。俺がチャラいとかチャラくないとかどうでもいいだろ」
「そうだね。でもこの暇を潰すにはいい話題かな、と思って」
買い物に出たボーボボ達を待機している間、全くもってすることが無いのだ。こんなに退屈ならゲームか漫画でも持って来ればよかったと思う。買えばいいんだろうけれど、そんなお金どこにも無いわけで結局考え事をするか、同じく待機している破天荒で遊ぶしかないわけだ。
「金髪なのにね」
「地毛なんだよ。別にいいだろ」
「悪いとは言ってないよ。私、わりと破天荒の金髪好きだし」
「そ、そうかよ……」
何だ、こいつ。いきなり顔逸らしやがって。人と話す時は相手の目を見て話せって習わなかったのか。
「そういやぁ、お前はピアスしてるんだな」
「ん? あぁ。母親がする人だったからね」
「そんなもんなのか?」
「さあ?」
よく考えれば、故郷にいた頃の友人達は別に、母親がしているからとかでピアスしてる子はいなかったな。お洒落だとか、可愛いからとか、皆がしてるからとか、そう言った子ばっかりだった。
「私がピアスするようになったのは19歳くらいの時だし」
「その頃グレたのか」
「違います」
破天荒の言葉に対し、そう言ってから一度息を吐いた。
「何となく、だったのよ」
「ふーん」
アクセサリーを可愛いとは思うけれど、それを身につけようと思う程私は女らしくないし、耳元に小さな飾りをつけるくらいなら目立たなくていいかと思った。可愛いとか綺麗とか、そんな言葉を言われたいわけじゃなくて、母親と同じにしてみたかったのかもしれないな。そう考えると私はマザコンか、と自分にツッコミを入れてしまいたくなるけれど。
「まぁ似合ってんだし、いいんじゃねえの?」
思わず目を丸くしてしまう。まさか破天荒の口から褒め言葉が出てくるとは思わなかった。本人は特に照れた様子を見せないから自分が何を言ったのかも理解してないのだろう。むしろこっちの顔が熱くなってしまう。でもまぁ、あからさまにそれを表に出すことはしないけどね。
「天然か……」
「あぁ? 何だよ?」
「何でもない」
見た目はかっこいいんだし、無自覚に褒めるのは止めてほしい。心臓に悪い。これだからコイツは女を鬱陶しく思いながらも近寄らせてしまうんだろうな。あとは怒りっぽいところとかその他諸々直してくれれば理想の男だろうか。
「人は見た目で判断するなって言うのはこのことね」
「さっきから何なんだよ」
「破天荒はやっぱりチャラくないってこと」
「まだその話引きずってんのか!」
「見た目は大事だと思ってたけどやっぱり人間中身ね」
「当たり前だろ! つーか今更そんな話してんじゃねえよ!」
そう言うと破天荒は一度口を閉じて、少し何かを考え始めた。それを不思議そうに見ていれば突然口を開いて声を発する。
「お前は見た目と違って雄々しいと言うか、見た目で引っ掛かって中身見たらガッカリする感じだよな」
真顔でそんなこと言ってきた。大変失礼極まりないと思ったからその辺の雑草を投げつけてやった。すると怒った様子でこちらに近付いてくる。
「テメエ!! なにすんだ!!」
「あれ? 可愛いお花を贈ったつもりだったんだけどな?」
「とぼけんじゃねえ!!」
この怒りっぽさはからかうのに丁度いい。けれど今回は破天荒の方にも非があると思う。レディに向かってガッカリするとは許せん。
「まったく……」
私が心の中で戦闘態勢に入っていれば、破天荒は思ったより突っ掛って来ない。今日は雪でも降るのか? 普段なら一度怒れば女子供関係無く胸倉掴んでくる勢いなのに。
「お前、見た目はそこそこ良いんだからそれに見合うような性格になれよ」
「残念なイケメンのお前にだけは言われたくない!」
思わず本気でそう言ってから殴った。
まずはその残念さを直してこいend
あとがき
毛夢とか俺得でしかなく、私しか需要がないと思ってます。
私にギャグなんて書けっこなかったんだ……。
残念なイケメンの破天荒が大好きです。
2013.01.19
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