ポケモン短編 | ナノ
温もりと熱に挟まれて

「全く…」

パタン、と救急箱の蓋を閉じる。

「ルカリオと修行してて怪我なんて、ゲンさん貴方一体いくつなんですか」

皮肉も含めてそう言うとゲンは苦笑いを浮かべた。

「はは……」

「もし私がミオの図書館に来てなくて、鋼鉄島に行かなかったらどうするんですか!」

「………」

「もういい大人なんですから、いい加減ポケギアか携帯持ってください」

そしたらいつでも連絡とれますから。

ナマエがそう言うとゲンは口を開く。

「あれ…高いんだよね…」

ポケギアの値段を思い出しながら顔を青ざめさせた。

「また何かあった時、連絡とれなくて、私来れなくて、それでゲンさんっ…」

何を想像したのか、いきなり涙を浮かべて泣き始めた。

「え…えっ…」

おどおどと慌てて何をしていいのか分からないゲン。

「もういいですっ…!」

ナマエはバッと立ち上がり出て行こうとした。

「あ、ちょっと待って!!」

思わずゲンがナマエの腕を掴み、そのまま勢いで引っ張ってしまう。

「えっ…!」

バランスを崩し、ナマエはゲンの上に倒れる。

ドサッ、と思ったよりも軽い音がする。

ナマエは思わず瞑った目を開けると、ゲンを下敷きにしていた。

傍から見ればナマエがゲンを押し倒しているようにも見えるだろう。

「……」

「大丈夫かい!? ナマエ……って、えっ!?」

頭と背中に感じる痛みに耐えつつ目の前のナマエを見ると、ゲンは目を丸くした。

そこには、目に涙を溜めて、顔を真っ赤に染めて、口をパクパクとさせているナマエがいた。

ただ退けばいいだけの話だけど、ナマエにとってこれほど予想外だったことはない。

「あ……え…う…」

「ナマエ…? 大丈夫?」

そこでハッと我に返る。

やっとゲンの上から退くと、少し距離をとった。

「(私ったら何をして…いや今のはゲンさんが腕を引っ張ったからで…で、でも早く退いていれば…)」

ナマエの頭の中で思考回路が狂っていく。

まともな思考ができなくなってきていた。

「ごめんね…。私が腕を引っ張ったから」

「えっ…あ、いえ…」

未だ自分の顔が熱いと解るナマエは両手で包むように頬を覆った。

「私の方こそ、ごめんなさい…」

ゲンさんの金銭問題を考えずにポケギアか携帯を買え、なんて言ってしまって。

「…ゲンさんにはゲンさんの考えがあるのに……」

「まぁ……(ただ高いからってだけなんだけどなぁ…)」

反省しつつも、頬の熱は取れず、冷たい手に頬の熱さが逆に心地よいとさえ思えてきたナマエは顔を俯かせた。

「……」

そんなナマエを見て、ゲンはナマエとの距離を縮め、スッと手を伸ばして自分の頬を覆うナマエの手をさらに手で重ねて包む。

それに気づくと驚いたように顔を上げる。

「ごめんね…いつも心配かけて…」

「ゲンさん…」

「出来るだけポケギア買うように考えてみるよ」

「本当、ですか…?」

それにゲンは頷くと、ゆっくりと顔を近づけた。

「できるだけ心配かけないようにしたいからね…ナマエには泣かれるよりも笑ってほしいんだ」

その言葉にますます顔の熱が上がって、ますます真っ赤になったナマエは先程ゲンの上に倒れた時みたいに口をぱくぱくとさせた。

「涙、止まったね」

くす、と笑った。


温もりと熱に挟まれて

(私の気も知らないで無邪気に笑うんだから)

end

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