ポケモン短編 | ナノ
別に嫌いじゃないんですよ

「ランス様…何をしているんです?」

「あなたを待っていたのですよ。わざわざ待っていてあげたのですから感謝なさい」

「(じゃあ待たなければいいのに)」

「ナマエ、今日は何の日かご存知ですか?」

「今日、ですか…?」

確かひな祭りはこの間終わったな。今日は何か特別な日だっただろうか。

「その様子だと、分からないようですね」

「はぁ…特に何の変哲もない日だと思いますが…」

そういえば、したっぱの女がしたっぱの男に何かないのかと詰め寄っていたな。カツアゲの如く。

「全く…これだからナマエは…」

「(私が悪いのか…?)」

「もう少し女らしくしたらどうです? せめて服も男子用のズボンでは無く女子用のスカートにすればいいものを」

「スカートとか動き辛いんでいいです。ズボン凄い楽」

まぁ、おかげで新人には男子と間違われることも多々あるけれど。そんなことはもう慣れた。

「それで、ランス様は私に何か用ですか?」

話があるならさっさと済ませてほしい。どうでもいい話なら、本当にどうでもいいんで自室に戻らせてください。

「ですから、今日は何の日ですか、と問うているんです」

「…採用の日…とか…」

「馬鹿ですね」

くそう。上司じゃなかったら殴ってるところだ。

「今日は3月14日、ホワイトデーですよ」

「…あぁ、そんなどうでもいい日でしたか」

「ですから、この紙にナマエの氏名を記入していただきハンコを押してもらえますか」

どこからともなく婚姻届の紙を差し出された。多分馬鹿はこの人だろう。

「お断りします」

「これは私からのバレンタインのお返しですよ」

「私、本命チョコをあなたにあげた覚えは無いんですが」

「しっかり頂きました」

「嘘仰らないでください」

そろそろ敬語が面倒になってきた。もう絡まないでくれよ。

「嘘なものですか。しっかり証拠の画像が残っているんですよ」

バッ、と写真を見せられた。そこには確かに私がランス様にあげたお世話になっているお礼のチョコがあった。

真ん中にデカデカと義理と書いたはずが、LOVEに変わっているところを見ると、上だけ削って書き直したのだろう。暇人かこの人。

そっちがそうくるのであれば、こっちも手段は選ばない。他人を巻き込んでも構わないくらいには思ってるんだから。

「あれ…それは確か私がアポロ様に差し上げたはずのチョコ…まさか間違えてしまったのでしょうか…どおりでお返事が貰えないはず…」

決して上手な演技と言うわけでは無いが、多分この人にはこのくらいで十分だろう。

アポロ様には悪いけど、犠牲は必要なのだ。

「アポロ…ですと…?」

相当ショックを受けた表情をする緑頭の上司。

「大きく義理と書いたものを渡してしまえば…お返事など貰えるはずも無いですね…」

「おのれアポロ…私を差し置いてナマエに色仕掛けをするなど許すまじ!!」

「(色仕掛けとかされてない上に、そんなことする人じゃねーよ)」

けれどランス様はアポロ様の名前を叫びながら走り去ってしまった。効果は抜群だったようだ。

ランス様が走り出した瞬間ポケットから落ちた箱には、私の名前が書いてあるカードが添えており、とりあえず貰っておいた。


別に嫌いじゃないんですよ

(クッキーか…なかなか美味しい)(食べましたね…)(ランス様…!?)

end


あとがき

ホワイトデーネタ。
バレンタインで書いたキャラで書けなくて違うキャラに走った。
私の中のランス様がよく分からないことになっている。

2012.03.14

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