ポケモン短編 | ナノ
かぜっぴきなあなたが

「(今日はゲンさん、どの辺にいるかなー)」

そう思いながら鋼鉄島に向かう為、ミオシティから出ている船に乗ろうとした時。

ルカリオにズルズル引きずられている青い服を纏った男性の姿が視界に入った。

「…ゲンさん?」


ルカリオを手伝いながらゲンさんをとある家に運んだ。

ここが彼の家なのか、そうじゃないのかは分からない。ルカリオが物の位置など詳しいから長らくここに住んでいるのは確かだ。

失礼ながらゲンさんの上着を脱がせ帽子を取り、ベッドの上に寝かせ布団を被せた。

「エーフィ連れて来ればよかった……」

はぁ…と息を吐いて、ベッドの横に座り込む。すると水が入ったコップをルカリオが持ってきてくれた。

「ありがとう、ルカリオ」

ゴクゴクと水を飲み干し、次にゲンさんがどうしてこうなっているのかルカリオに問うてみた。

「ゲンさんに何かあったの?」

しかし私にはルカリオの言葉は通じない。多分他のポケモンの言葉も通じない。だからいくつか選択肢を出してみた。

「転んだ…わけじゃなさそうね…野生のポケモンに襲われた?」

フルフルと首を横に振るルカリオ。どうやら違うらしい。

「まさか、人に襲われた…?」

再び首を横に振る。そしたらルカリオは腕を伸ばし、ゲンさんの額を指差した。

ルカリオが鳴き声を上げるから、きっと触ってほしいんだと思いそっとゲンさんの額に触れてみる。

「あつっ!」

ゲンさんの額はかなり熱く、よく見てみれば頬も赤くなっていて汗もかいていた。

「もしかして、風邪…?」

そう聞いてみると、ルカリオは漸く首を縦に振ってくれた。


どうして風邪をひいてしまったのか私には分からないけれど、ルカリオだけじゃ何かと大変だと思う。

人の家に長く居座るのは非常に申し訳ないけれど、しばらく看病させてもらおう。

本当は着替えをさせたかったけれど、流石にそれはやめておこうと思い、まずは濡れタオルを用意した。

「ルカリオは、しばらくしたらまたタオルを水で濡らしてよく絞って、またゲンさんの額に乗せてね」

そう言うとルカリオはコクコクと頷き、鳴き声をあげた。きっと分かったと言う意味なんだろう。

続いて私はルカリオに冷蔵庫の中の物や食器などを使っていいかと問えば、更に頷いてくれた。

流石のゲンさんも鍋や器の類は持っていてよかった。無かったら彼の頭の中を覗いてみたくなるところだ。

そんな鍋に水を入れ、冷蔵庫にあった適当な食材を使い、アツアツのお粥を作っていく。

味噌仕立てで食べやすいように細かく切った材料をご飯と一緒に煮ていった。

「お豆腐あるともっと美味しいんだけどなぁ」

独り言を話していると、奥の寝室からルカリオの慌てた鳴き声が聞こえて、その後にドサッとかゴンッみたいな音が聞こえた。

「!?」

「ゔぅぅぅ……」

呻き声のようなものが聞こえ始め、一旦鍋の火を止める。手を洗ってから寝室を覗いてみればベッドから落ちたであろうゲンさんを必死にベッドに戻そうとするルカリオの姿があった。

「ちょ…何でゲンさんベッドから落ちてるの!?」

再びルカリオを手伝いベッドの上に乗せた。すると今度は意識が戻ったらしいゲンさんが怠そうな目でこちらを見てくる。

「あ、今ので起きました?」

「…どうして…ナマエがここに…」

「鋼鉄島に行こうとしたらゲンさんを引きずったルカリオがいたので、一緒に来ました」

「……」

「風邪だそうですよ。体調管理しっかりしてました? あと今お粥作ってるので食べたら薬飲んでください」

「……」

「それと暖かい格好をしてください。あと汗をかいたと思うんで一度着替えてください。ルカリオがパジャマを用意してくれました」

「…ありがとう…ナマエ、ルカリオ」

まるで母親のような台詞を言った私だが、ふにゃりと笑うゲンさんに思わずときめいてしまった。

そして何事も無く着替え始めたゲンさんに慌ててパジャマを突きつける。

「私が出てってからにしてください!」

慌てて寝室から出ていって、お粥の続きを作り始めた。しかし顔は真っ赤に違いない。

「(私ってばやらしい…)」


自己嫌悪に陥りながら作ったお粥を食べさせ、薬を飲ませるとゲンさんは再び眠ってしまった。

また額にそっと触れてみると、熱が下がってきているようで、ホッと安心する。

「(でも私…お節介だっただろうか……)」

恋人でもない私が部屋に長居してしまって、大きなお世話じゃなかっただろうか。

「…ごめんなさい」

思わず口に出して謝ってしまった。ゲンさんが寝てて本当に良かったと心底思う。

後はルカリオに任せて、私は自宅に戻るとしよう。これ以上長居するのは良くない。

そう思って寝室を出ようと立ち上がると、バッと腕を掴まれた。

「??」

「ナマエ、ありがとう」

あぁ、その言葉だけで、十分すぎるくらい幸せだ。


かぜっぴきなあなたが

(普段と違って、更に愛しく感じてしまう)

end


あとがき

リハビリがてら安定の風邪ネタ。
いや、安定はしてないけれど。
ゲンさん書くのも久々だったし、書いてて早くこいつらくっつけと思っている。
もう恋人同士の話書いてもいいかな。
そしてルカリオがかなりのお利口さんになってきた。

2012.01.26

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