敵とみなします
ほんの少しの休み時間。
必死に手に入れたその時間を有効に使う為に、白いそれは長い足を使い、全速力で走る。
着いた一つの建物、そこの庭には子供を建物の中に入れようと、声をかけたり背中を押したり入り口まで手をひいたりする、一人の女性の姿があった。
その女性の姿を、しっかり確認すればテンションは先程よりも上がっていく。
「みんないるかなー?」
子供達の元気のいい返事が聞こえたすぐ後に、
「はーい!!」
と、子供の声とはかけ離れた低い声が続いた。
「クダリさん…?」
驚いた様子の女性に、白を纏ったサブウェイマスター、クダリはいつも笑顔なのだが、さらに笑みを浮かべる。
「ナマエ! ぼく今休み!」
「あ…お昼休み、ですか…?」
コクコク、と頷くクダリに、ナマエは微笑む。
「じゃあ、おやつ食べていきます?」
どうやら三時のおやつの時間らしく、子供達は廊下にある水道で手を洗ってきた模様。
特に決まりは無いが、何となく自分の席と思っている場所に座り、おやつが出てくるのを待ち遠しそうにしていた。
「おやつ!! 食べる食べる!!」
クダリには小さすぎる椅子に座り、机の上に出された今日のおやつを見た。
バウムクーヘンが一切れ皿に盛られ、一緒にモーモーミルクが出された。
子供達が一斉に「いただきます!」と言って食べ始めるのに続いて、クダリも食べようと小さいフォークを握る。
しかし皿を見てみれば、そこにバウムクーヘンの姿は無かった。
「??」
机の下、椅子の下と見てみるも、落ちてる様子もない。
「クダリさん? どうかしましたか?」
「ぼくのバウムクーヘン、ない…」
「???」
突然無くなったバウムクーヘン。
ナマエがその在処を知っているわけも無く。
クダリはしょんぼり、と肩を落とした。
すると、どこからかポケモンの鳴き声が聞こえ始める。
「この声…ゾロアーク?」
ナマエがポケモンの名を口にすると、ゾロアークは姿を現した。
ゾロアークは子供に姿を変えていたのだ。
このゾロアークは紛れもなくナマエの手持ちポケモンで、モンスターボールから出てきてしまったらしい。
ニヤリ、と笑うゾロアークは、クダリにその笑みを見せつける。
間抜けなことに、ゾロアークの口元にはクダリのバウムクーヘンのカスが付着していた。
「ぼくのバウムクーヘン!!」
「まさか、ゾロアークが食べちゃったの…?」
ゾロアークはクダリをギロリ、と睨み付け、今にも襲いかかりそうだ。
クダリはこのナマエのゾロアークが苦手だった。
自分がナマエに近づくと必ずと言っていい程、邪魔しに来るのだ。
まるで、ナマエのナイトでも気取っているかのように。
「うぅ…」
悔しそうにゾロアークを見るクダリ。
「あの…クダリさん、よければ私のをどうぞ。一口食べてしまいましたが…」
「いいの!?」
クダリはぱあぁ、と顔を明るくさせる。
差し出されたバウムクーヘンを遠慮無く口に頬張った。
今度はゾロアークが悔しそうな表情を浮かべる。
「ゾロアーク、人のものを食べちゃダメでしょ」
しかし自分の主人に叱られてしまい、ゾロアークはしゅん…とした。
「ナマエ! ナマエ!」
バウムクーヘンをたいらげたクダリはナマエを呼ぶ。
クダリに近づいたナマエは、何事かと頭上に疑問符を浮かべていると、不意に腕を引かれ、頬に何かがあたった。
「へ……?」
「バウムクーヘンのお礼! すっごくおいしかった!」
にっこにこな笑顔を浮かべるクダリは、満足そうにモーモーミルクを飲む。
しかしナマエの顔は赤くなり、見ていたゾロアークは怒りに震え、鳴き声をあげたのだった。
敵とみなします(ゾロアークになんか負けない!)
end
あとがき
保母さんな夢主。
相変わらずクダリさんの口調難しいな…。
カタコトって書きにくい…。
でもクダリさん可愛い←
2011.12.03
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