ポケモン短編 | ナノ
自覚するまであと少し

「こら! 君達、ふた…三人乗りは危ないよ!」

って、どうやって三人で乗ってるんだ!?

と思わずツッコミをいれてしまった。

「そうだ! 漕ぐのは俺なんだぞ!」

赤い髪を揺らし、後ろにいる二人にそう言う少年は酷く汗をかいていた。

「だってー!」

「それぞれ自転車に乗るとスピードがバラバラで遅れたりするんですよ!」

よっこいしょ、と自分よりも年下の彼らはそう言いながら自転車から降りた。

「ハヤトさんだって学生時代に彼女と二人乗りくらいしたんでしょ?」

女の子は恋話好きだな、と思いながら唯一の女の子を見る。

「してないよ。学生時代、俺も彼女も徒歩だったからね」

「ハヤトさん彼女いたんだ! どんな人ですか!? 可愛い人!?」

「今も付き合ってるんですか!?」

男の子まで興味津々で質問してきた。

自転車を漕いでいた赤い髪の男の子は、ゼェハァいいながら息を整えている。

「残念ながら、その子とは卒業して別れちゃったんだ」

そう言ったら「なぁんだ」と言ってガッカリしたような表情を浮かべた。

「とにかく、自転車の二人乗り、三人乗りは危ないからもうやめるんだぞ! とくに、女の子もいるんだから怪我させたらどうすんだ」

「はーい」

「じゃあ交代で乗ろうよ」

「あとの二人は歩きな」

疲れている赤い髪の男の子は自転車から降ろされ、歩くことになった。

「(あの子、大丈夫か…?)」

と心配しながら少年少女の後ろ姿を見ていたら、視界の隅に影が見えて振り返る。

「お仕事大変だね、警察官」

ニッ、と笑ってこちらに歩いてくるのは、女子高生。

「やあナマエちゃん、今帰り?」

「うん。ハヤトは立派に警察官やってるね!」

「当たり前だよ」

「いずれは刑事かな?」

「それは、どうだろう?」

高校生らしい風貌の彼女は、少し前は荒れていて、深夜に俺が補導した。

すると、本当は不良にはなりたくなかった、と事情を話してくれて、今ではしっかり勉強に励む学生だ。

ただ、一つ問題があるとするならば、

「そうだ、購買の焼きそばコロッケパンが美味しいんだ。ハヤトにあげるね」

「あ、ありがとう」

「本当はお弁当作ってきてあげたいけど流石に朝は会えないもんね」

「うん…」

俺に対して純粋に好意を向けてくることだった。

好意自体はありがたいが、俺とナマエちゃんではまず年齢的にまずいだろう。

年下に慕われるのは嬉しいことなんだけどな。

「あ、でも会いに来るの迷惑だったら言ってね!」

ナマエちゃんは優しい子だから、俺も強くは言えなくて…。

そもそも、俺は心の底では嫌がっていないのかもしれない。

「嫌じゃないよ。いつも差し入れありがとう」

そう言ったら、本当に嬉しそうに笑うんだ。

「(あれ…? なんか今ちょっと…胸が……)」

ドキッ、としたような。

「じゃあまた明日!」

大きく手を降って、帰っていく姿に、ほんの少し寂しさを覚えた。


自覚するまであと少し

(毎日がこんなに楽しいなんて)(初めてかもしれない)

end


あとがき

スペの警察官ハヤトを思い出してやっちまった結果がこれだよ…。
一応現代パロってことにしておきました。
最初の自転車三人乗りの子はあの子たちです。

2011.12.01

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