あなたのことを考えると
たらぁ…と鼻から垂れ、ボタッ、と床に落ちた。
見てみればそれは赤い色をしており、今私の鼻の下に垂れているのも赤い色をしているんだ、などと余計なことを考えていれば、
「あ…あぁぁ…!」
目の前の人物が青い顔をして声をあげた。
「ナマエっ…大丈夫ですか!? は…鼻血がっ…!!」
「あぁ、まぁ、うん」
この数分で何が起きたのか説明しよう。
まず、私と目の前の男、ノボリはホームで電車を待っていた。
理由は、私が昨日来た時に、休憩室に忘れ物をしたからだ。
ホームに入ればそこにはノボリがいて、一緒に行くことになった。
いつも通り他愛ない会話をしていたが、ふと喉が乾いたので自販機でお茶を買って飲んでいたら、そろそろ電車が来る頃らしく人が増えてきた。
悪意も何もなく、電車に乗りたい人の誰かに押され、固い固い柱に勢いよく激突。
それから数分もしない内に電車が来て、行ってしまった。
一部始終見ていたノボリが駆け寄ってきて、私は何とか意識を手離さず、鼻血を出すと言う現状に至る。
「許せません…!!」
ふるふると怒りで拳を震わせる。
これは落ち着かせた方がいいか。彼なら私を押した人物を見つけ出しボコボコにすることも可能だろう。
コートの内ポケットから携帯電話を取り出し素早く電話をかけるノボリ。
「もしもし、クダリですか。ナマエが何者かに押され柱に激突してしまいました。早急にその人物を見つけ出し捕らえてくださいまし」
「落ち着いて、ノボリ」
しかし遅かった。
電話相手であろうクダリに、ホームの番号と電車の時刻などを詳しく伝える姿は、流石サブウェイマスターといったところか。
あぁ、こんなんじゃ惚れちまうぜ、とか思ったけど、もう惚れてんだった。
「これで犯人も逃げられないでしょう。御安心ください」
「安心できないんだけど」
もうすぐ見つかるであろう私を押した人物を哀れに思いながら、未だ垂れ続ける鼻血を止める為、ポケットティッシュを取り出して丸めて鼻に詰めた。
今の私はかなり格好悪い姿だろう。
「それではナマエ、わたくし達もクダリの元へ急ぎましょう」
中央駅に着いて執務室にやって来ると、どうやら既に犯人を見つけたらしく、ドヤ顔でクダリが近づいてきた。
犯人に殴りかかりそうになったノボリを何とか押さえながら、謝罪だけ要求して犯人を解放すると、ノボリはどこか不服のようで、仏頂面が更に仏頂面になっている。
自分で言っててなんだが、仏頂面が更に仏頂面って何だろう。
とか、また余計なことを考えてたら、落ち着いたノボリが口を開いた。
「ナマエ……なぜ、許してしまったのですか…」
「だって、あの人は急いでて、人の流れに従って歩いてて、たまたま私を押してしまっただけだもん」
それに、ノボリが犯人を殴ったら、私がノボリを殴ってたよ。
「まぁでも、ありがとう、ノボリ」
心配してくれて、怒ってくれて。
そう言って笑ったら、その白い頬が赤くなった。
あなたのことを考えると(思わず周りが見えなくなる)
end
あとがき
夢主の為に我を忘れるノボリさんマジ素敵←
何か毎回クダリさん出てくるなー。
ノボリさんの口調曖昧だから無意識に誤魔化してるのかな。
2011.11.06
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