ポケモン短編 | ナノ
カチッと、音が鳴る

私が思うに、彼は私の前では素の性格を出しているのだろう。

自惚れではない、と思う。

けれど、彼の部下である私は、嫌でも仕事中の彼が見えてしまうわけで。

仕事中の彼は、したっぱの女達がキャーキャー騒ぐのも頷けるくらいには、カッコイイんだと思う。

今もぼぉー、と彼を見ていれば、視線に気づいたのかこちらを振り返った。

「おや、ナマエから愛の視線が送られてくるとは、日々頑張った甲斐ありますね」

先程の言葉を撤回したい。物凄く。

「愛の視線を送った覚えはありませんが」

「では何故私を見ていたのです?」

「ヤドンの井戸の仕事でも無いのにヤドンの尻尾を肌身離さず持ち歩いてるのが気持ち悪いな、と思いながら見ていました」

思うに私は、彼の前では殆ど素を出している気がする。

男が嫌いすぎて、暴言すら吐かなかったのだから。

でも彼に対しては、上司であるにも関わらず、思ったことも思わなかったことも言ってしまう気がする。

さっきだって、彼がヤドンの尻尾を持っているかなんて分からないのに。

変なことを言ってしまったな。

「な、何故私がヤドンの尻尾を肌身離さず持ち歩いてると知っているのですか!?」

「……」

ナマエはエスパーですか!? それともヤドンですか!?

なんて少し騒ぐ上司を見ながら私は思う。

「(ヤドンの尻尾持ってんのかよ。しかもヤドンですかってなんだそれ)」

焦りを見せる彼は、とてもじゃないが冷酷とは思えない。

「ランス様、冗談です」

そう言ってやると、彼の動きは止まった。

「じょ、冗談ですと…?」

「はい」

彼への敬語に多少慣れ始めた気がする。

最初より、一緒にいることに嫌悪しない。

周りは男も多くて、どうしようもないくらい殴り飛ばしてやりたいけれど。

「(私、我慢を覚えたなぁ)」

「上司をからかうんじゃありません」

「いえ、私が耐えられず嘘を吐いたので。別にからかったわけではないです」

「は……?」

私は思ったより、この人のこと好きなんだろうな。

そう思ったら、自然と顔に笑みが浮かんだ。

すぐにハッとなって表情を戻す。

ランス様の方へと向いたら、何故か彼は顔を赤くしていた。


カチッ、と音が鳴る

(スイッチが入るのには十分すぎて)

end


あとがき

敬語って書きやすくて書きにくくて書き分けが出来ないものだと思います←
とりあえず二人の仲が早く進展すればいいと思ってます。
名前変換少なくてすみません…。

2011.10.29

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