ロキ夢(FT)
※ロキ出てこない。
※タルタロス編で夢主がオリキャラと戦うシーンだけ書きたかった。
※夢主の名前は出ないけど仄めかす文章はあります。
※オリキャラの名前は出ます。
※リハビリなのでセリフの括弧は変えてません。
――あーあ。私って案外、足手纏いだったんだな
彼女がそう心の中で呟くと、相手はしたり顔で彼女の顔を覗き込んで口を開く。
「お前は欠けた未完成な月だ。完成された月の私に勝てるはずがない。それが例え1パーセントでも」
相手は構える。彼女に止めを刺す為に。“欠けた未完成な月”と表現された彼女は、ゆっくりと手をついて立ち上がった。
今の今まで散々痛い目に遭わされて、ボロボロになりながらも戦っていた彼女は痛感していた。自分の非力さを。弱さを。自惚れていたわけではない。自分が強いと過信していたわけでもない。それでも彼女は、それなりにやれると思っていたのだ。今までやってこられたから。
満月の意味を持つ、バデルと名をつけられた相手はその名を気に入っている。完成された月を指す言葉だと、彼女に会った時口にした。それは自身が最強ではないにしても、彼女より優れていることをアピールしたいが為に。優越感を得たいが為に。バデルは彼女でなくても、戦う相手を欠けた月と表現する。
皮肉にも、その欠けた月は彼女に当てはまるのだから、偶然とは恐ろしい。彼女自身は自分の名と同じそれに多少の嫌悪を抱いて、だからこそ立ち上がる。
「まだ立ち上がるの? 思ったより図太いんだ?」
「……満月、ね」
「ん?」
口の中が鉄と泥の味でいっぱいになっても、ジャリジャリとした感触がしても、全身を痛みが襲っても、服がボロボロに破けても、彼女は立ち上がった。
「欠けた月は地上から見た月。月が一部、影に隠れているだけで実際に欠けているわけではない。そんなことも知らないの?」
「だから?」
「自分自身で、一人だけで、光り輝くことすら出来ないくせに……何が満月だ……」
「は……?」
それは相手に放つように、そして自分に言い聞かせるように、彼女は言葉の一つひとつを重々しく口にする。
「確かにあなたは強い。私は弱い。だけど負けることは許されないから――」
「何を……」
「道連れにしてあげる」
残った魔力を絞りきるように、彼女は彼女自身で最大の攻撃力をもって相手を戦闘不能とした。
――それでも、あの人が好きだと言ってくれたから、私はこの名前が好きだよ
2015.12.13
リハビリ。最近書けなかったので。
その他
2015/12/13 22:25
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