おはよう。
彼が一言そう言うだけで、私の心は踊り出すの。
今日だって彼に気付いてもらうためだけに前髪を切ったのよ?
今はまだこの気持ちを伝えるつもりはないけれど、あと少しで溢れ出してしまいそうなの…
「…へぇ。先輩でもそんな乙女心を持っとるんすね」
『どういう意味や、ゴラァ。』
「そのまんまっすわー」
『(殺してぇ…!!)』
「で、その愛しの彼って誰なんすか?もしかして白石部長??」
『は?』
「いや、先輩に挨拶なんてする物好きなんて滅多におらへんやないですか」
『あー確かに。って、他にもおるわ!!』
財前は気付いてへんかもしれへんけど、私が好きなんは自分なんやで阿呆。
さっきの私の思いかてあんたが好きなミクなんやで?
…脈なしすぎて逆に笑えてくるわ。
「…由夜先輩」
『あ?』
「メルト、いい曲っすよね」
手で髪をかき上げながらそう言う財前。
…てか、気付いてたんかい。
つか仕草がいちいちかっこえぇな、おい。
「あと俺、別に先輩のこと嫌いやないっすから。むしろその逆、やし…」
『え?』
「…えぇから早う帰りましょ」
そう言うた財前の顔を見ると、いつもの生意気な顔をしとった。自分は照れたりとかしないんかい!
…でも、ワックスで立たせた髪の隙間から見える耳が赤く染まってたんは気のせいやないと思う。