紅白戦が始まった。
しかし、サポーター達期待のミスターETUである村越はビブスを付けての参加。しかも監督である達海は村越のいるチームとは別のチームのベンチにいる。その事実にサポーター達の怒りは更に膨れ上がり罵声が大きくなる。
その声に椿は縮こまりながらも試合へと目を向ける。そこには若手組がベテラン組を翻弄するといった試合展開が広がっていた。
「…すごい…っ!」
素直に感嘆の声が出る。それぐらいに圧倒的なのだ。スピードもスタミナもまるで違う。一度ボールが若手組に渡ればパスを繋いでどんどんゴールへと近づいていく。選手一人一人のデータは知っているのだろうが初めて会ったはずの選手達をここまで動かすことができるものなのか。
「…これが監督、達海猛の力……っ!!」
達海の采配を直に目の当たりにした椿は改めて思う。ETUは強くなる、と。
「次ここに来るまでに俺ももっと頑張らなくちゃ……っ!!」
決意を新たにグラウンドを後にする。
走り去る背中を達海はどこか懐かしい気持ちで見つめていた。
(華奢な背中が)
(思い出のあの子とかさなった)