「はぁっ、はぁっ……、」

いつの間にか息切れするほど全力疾走していた椿は乱れた息を整えるために深呼吸をする。グラウンドを見れば選手達が何度も繰り返しダッシュをしている。練習風景を見られたことに満足し、どこか落ち着いて見られるとこは…、とフェンスに目を向けて目の前に広がる光景に息を呑んだ。

『拒否!』『達海監督就任反対!』
『裏切り者は出ていけ!』

フェンス一面に掲げられた数々の弾幕。それはいずれも監督に対する批判。スポンサーたちの認めないという意思表示。

「達海にETUを率いる資格はねぇ!!」


「あいつのしたことを忘れたのか!?」

「あいつはリーダーとしてチームを引っ張っていく立場を一度放棄したんだ。俺達は達海もフロントも信用しねえ、俺達が信用できるのは……ミスターETU…、村越さんだけだ。」

口々に文句を言うサポーター達。そしてその中でもリーダーと思わしき人物が言った言葉に椿は愕然とした。ここにいるサポーター達の中には誰一人として達海を監督として認める者はいないのだ。

「おい!出てきやがったぞ!!」

サポーターの一人が声をあげる。その声が引き金になってサポーター達が一斉にグラウンドへ向けて罵声を飛ばす。
椿もグラウンドへと目を向ける。そこにはジュース片手にタマゴサンドを頬張る男が居た。



(飄々とした佇まい)
(その姿はあの日のままで)




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