広がる青い空。グラウンドにはボールを追いかける選手たちの声が響く。
達海はひとつの声を聴いた。
その声は耳を澄まさなければ聴こえないほどに小さい、けれども一度聞いたら忘れられない透明な声。幼い少女のソプラノボイス。
誘われるかのようにグラウンドを出た。たどり着いたのはグラウンドから少し離れた林の中。
そこに少女はいた。
まるで自然を身に纏ったようにくるくると回りながら歌う少女に達海は目を奪われた。もっと近くで聴きたい、そう思い少女に近づき手を伸ばした。
−−…ところで目が覚めた。
「おい、達海!もう着くぞ!」
周りを見渡しても少女はいない。いるのは長年共に闘っていた、否これから共に闘う友人の姿のみ。
「達海?大丈夫か?」
「…うーん、なんとかね。」
再び声をかけられてやっと現実に戻る。今はETUのクラブハウスへ向かって移動中の車内。窓から見える景色にそういえば自分はイングランドから東京へ帰ってきたのだったと改めて実感する。と、同時に先程のはやはり夢だったのかと認識する。
目を閉じれば浮かんでくる少女の笑顔を思い出して口元が緩む。
「一回り以上も年下の奴に一目惚れとかやべぇよな……。」
誰に言うわけでもなくひとり呟いた。
(ふわり、と舞いながら歌う少女)
(その横顔に恋をした)