光は東京にいた。数日前に決定した交換留学の滞在先である並盛中学校が東京にあるのだ。
「並盛中ってどこにあんねん…。駅から一人で行けってありえへんやろ…。」
文句を言いながらもお節介な先輩たちが書いてくれた地図を片手に歩きだした。
***
「ツっく―ん!早く起きなさ―い!」
一階から母親の奈々の声が響いた。
「う〜ん、何だよ母さん……。今日は日曜日だよ…学校も休みだし、こんな早くに起こさなくても…。」
「何言ってるのツっくん!今日は交換留学生の受け入れ日で大阪からくる生徒さんを学校まで迎えに行くんでしょっ!」
綱吉は驚いた。なぜならそんな話は一言も聞いていなかったからだ。昨日はやけに掃除をはりきってやっているなあ、と思ったがそれだけだった。
「母さんっ!そんなこと俺一言も聞いてないよ!そんなのいつ決めたのさっ!?」
「あら、リボ―ンちゃんから聞いてない?」「リボ―ン…、またあいつ勝手にっ!」
「学校からもお手紙を頂いたわよ。1ヶ月もご家族と離れてしまうので寂しい思いをさせないように宜しくお願いします、って!」
奈々は学校から届いたという手紙を綱吉に掲げて見せた。
「…本当に家に来るの?」
「今更ダメなんて言えないでしょ〜。困ったときはお互い様!早く迎えに行ってあげてね〜。」
「ちょっ、母さん待っ…」
「いいから早く迎えに行け。」
「リボ―ン!どういうつもりだよ!こんなこと勝手に決めてっ!」
「もう決まったことだ。グダグダしてないでさっさと行けダメツナが。ちゃんとお供も用意してやったからな。」
「…は?…お供?」
ピ―ンポ―ン
「十代目〜!お迎えにあがりました〜!」
「お〜い、ツナ〜来たぞ〜!」
丁度いいタイミングに鳴ったチャイムに驚き玄関を見ると獄寺と山本が立っていた。
「早く行きましょう、十代目!!」
「待たせちまっても悪いしな〜。」
綱吉は呆然として2人を見る。そんな綱吉を2人も不思議そうに見た。
「ちょっ、ちょっと待ってよ2人共!もしかしなくても2人は交換留学生のこと……」
「知ってますよ。」
「…それじゃあその交換留学生が家に来るってことも……」
「ああ、知ってるぜっ!」
―――沈黙…。
「なんでだああ!!なんで俺より先に知ってるんだよ――!?つか、リボ―ン言えよっ!」
「すぴ―――zzZ」
「都合が悪くなると寝るな―――!!」
「うるせ―な、わざわざダメツナに言うわけね―だろ。」
「ふざけんなよ、お前っ!」
「まあまあツナ、い―じゃね―か!んなことより早く迎えに行ってやらねーと留学生が可哀想だぞ。」
「そっ、そうですよ十代目!早く行きましょう!」
「早く行けダメツナ。」
そう言い残すとリボ―ンはどこかへ消えてしまった。残された綱吉は諦めたように溜息をつくと獄寺と山本に向き直った。
「はあ…、母さんも乗り気だし…しょうがないか。獄寺くん、山本、悪いけどつきあってくれる?」
綱吉の問いに当然のように首を振った2人と笑いながら玄関を出た。
***
「ここさっきも通った気がすんねんけど…。」
財前光は完璧に迷っていた。地図を見てもさっぱりといっていいほど学校らしい場所には辿り着けない。大体、汚くて地図なんか読めやしない。はっきりわかるのは駅と学校らしきマークだけだ。誰かに道を聞こうかと立ち止まり息を吐くと、2人の男に絡まれてる女の子達が目に入った。
「離してください!」
「いいじゃん、暇なんでしょ?」
「ハル達は急いでるんです!」
「俺達と遊ぼうぜ〜!」
めんどくさいなあ、と思いその場を素通りした財前だったがすぐにその場に戻ることになった。なぜなら絡んでる男達と絡まれている女の子達以外に人がいなかったのだ。溜息を吐きながら足を向ける。喧嘩には多少なりとも慣れているのでなんとかなるだろうと思いながら。
「あの―、」
「ああ?」
ドカッ
男が振り向いたと同時に足を上げる。男の体を蹴飛ばして驚いているもう1人の男は無視して呆然と立ち尽くす女の子2人に声をかける。
「すいませ―ん、並盛中ってどこにあるか知ってます?」
その場に似つかわしくない間延びした声が響いた。
The reason of the great being late.(大遅刻の理由)