部員のみんなに交換留学へ行くことを認めてもらえた光は部室から一足先に外に出ていた謙也に駆け寄った。

「謙也さんっ!」

「どないしたんや?」

「…えっと、」

「光?」

「さっきはありがとうございました。謙也さんが俺のこと応援したいって言ってくれて嬉しかったっすわ。」

「光…、当たり前やろっ!光は俺のいっちゃん好きなやつやで、好きなやつの応援するんは恋人として当たり前や!」

「謙也さん…、恥ずかしい人やな。」

「なっ、恥ずかしいって言うなやっ!これが精一杯やっちゅーねんっ!」

「…ふはっ、謙也さん焦りすぎや。」

謙也のあまりの焦りように笑っていた光は急に真剣に話し始めた。

「でも、何の相談もなしに決めてもうてごめんなさい。」

「ええって。校長が決めてもうたんやからしゃーないわ。」

「…ホンマは断る事もできたんや。やけど俺は行きたいって思った。……謙也さんと離れる為に。」

「…え?…光?何言ってるんや?」

光は今までずっと思いながらも隠していた自分の気持ちを謙也に少しずつ打ち明け始めた。

「謙也さんは今年卒業で卒業したら会えなくなる時間が増えて、そしたら俺は耐えられるんかなってずっと思っとった。俺の我が儘で謙也さんの邪魔するんは嫌や。せやけど全く一緒にいれへんのに謙也さんにずっと俺のこと好きでいてもらえる自信もない。……やから一回試しに離れてみるんもええかなって。」

光の気持ちを聞いた謙也は愕然とした。今まで自分の隣で普通に接していた恋人がこんなに悩んでるなんて思いもしなかった。謙也にとっての卒業はただ高校に進学するだけのことで将来のことに不安がないと言えば嘘となるが、光とのことに関しては不安など微塵にも考えていなかったのだ。

「そんなん、そんなん好きでいるに決まっとるやないかっ!俺は光が好きなんや!光以外を好きになるわけないやろっ!」

「今はそうでもっ!……これから先ずっとそうなんて保証なんかないやろ?離れてみたらやっぱし女の子の方がよかった、なんて思うかもしんないやないすか。」

「なんでそんなこと言うんや?俺のこと信じられへんのか?」

「ちゃう、謙也さんが信じられへんのやない。俺は俺が信じられへんのや。謙也さんに好きでいてもらえる自信が俺にはまだないんや。」

「……光。」

「せやから、せやから待ってて謙也さん。1ヶ月だけ俺に時間を下さい。1ヶ月間謙也さんと離れてみて色々考えたいんや。1ヶ月したら自信もって謙也さんに好きって言うから、……謙也さんに好きって言ってもらえる自信つけるから。」

光の気持ちや交換留学への決意を知り謙也もある決意を固めた。

「…光。光がそんな悩んでるなん知らんかったわ。ごめんな、独りでそない悩ませてしもうて。1ヶ月でええんやな?1ヶ月したら自信もって俺に気持ち伝えてや?待っとるから。けど、これだけは覚えといてや。俺は光が何処ににいようとどんなに離れていようと光が好きや。1ヶ月離れようとこの気持ちは変わらへんからな…?」

「…ありがとう謙也さん。」

一週間後、光は謙也への想いを再確認するため並盛中学校へと旅立った。



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