※白石が部長を引退した後の話
アンタから受け継いだ部長という肩書き。ただの役名、そう決めつけていた名がこんなにも重くて潰れてしまいそうになる。この名を二年も背負っていたアンタがどうしようもなく遠くて近づいたと思った気持がどんどん沈んでいく。
それでもこのままじゃいられなくて…、平気なフリをしてみる。だけどなぜだかアンタにはバレバレで、「疲れた。」そう思って開けた部室には「お疲れ様。」なんていつもの顔。
ほほ笑むアンタは強くて、
それでいてやさしくて、
泣きたくなった。
それでも泣き顔なんか見せて「コイツに部長は無理やったか。」なんてゲンメツされたくないからグッと我慢。それでもひろげられた腕と「我慢せんでええからおいで?」なんて甘い言葉に翻弄されて耐えていたことなんか忘れて飛び込んでしまう。「こんなん反則や。」なんて思いながらも一度でも触れてしまえばもう自分から離れるなんて無理だ。「光はええ子やな。えらい、えらい。」、そう言いながら抱きしめられて必死で止めていた涙がこぼれた。
数分間無言で抱きしめられていい加減何か言わなきゃと思っても開いた口から出るのはしょうもない嗚咽ばかりで…ぽんぽん、と背中を叩いて落ち着かせようとしてくれるこの人はやっぱり俺の中ではいつになっても部長だと思った。笑いながら支えてくれる部長にこれだけは伝えたい。
「お疲れ様でした」
と
「ありがとう」
(つらいとき)(なきそうなとき)
(このひとは)
(いつだってそこにいてくれた)