「ひかちゃ、おっきの時間やで!!ひかちゃーおっき!!」
光は甥っ子の声で目が覚めた。まだ舌っ足らずな甥っ子は光の名前をちゃんと言えないようだ。
「んー。もうそないな時間か…。」
「朝やで、ひかちゃー!!僕、ひかちゃー起こしにきたんやでー!!えらいー?」
「おん。めっちゃえらいなー。」
「あとなあとなー!!ひかちゃーたんじょーびやろー!!おたんじょーびおめでとーやでー!!」
「!?…ありがとな。」
甥っ子が自分の誕生日を祝ってくれることに驚きながらも無邪気に笑う甥っ子が可愛くて光も無意識に優しく笑いながら一緒に朝ご飯を食べに一階へおりた。
「おはよー。」
光が挨拶をすると父、母、兄、義姉から挨拶と共に「おめでとう」の言葉が返ってきた。そのことに嬉しく思いながらも甥っ子と朝ご飯を食べ、学校へ行く準備をしていると突然チャイムが鳴った。
ピーンポーン
甥っ子を抱っこしていた光は手が放せない母に代わり、そのまま玄関に向かった。
「はーい。どなたですかー?」
ガチャッ
「おはよーさん。財前?」
「…し…ら…いし…ぶちょ…う?」
玄関の扉を開けた先にいたのは部活の部長兼先輩兼恋人の白石蔵ノ介だった。
「ひかちゃー?だーれー?」
甥っ子の声に我に返った光は抱きかかえていた甥っ子を離し、向こうに行っとくように頼んだ。
「えっと…何で白石部長がここにいるんすか?」
「迎えに来たんや。一緒に学校行こうかと思ってなあ。しっかし財前にえらく懐いとるんやなあー甥っ子くん。」
「まあ、遊んでやったりしとるんで。ってか、約束してましたっけ?」
「いや、してへんよ?」
「何でいきなり?」
「いきなりや嫌やったか?」
光が尋ねると白石は困ったように聞き返した。白石が寂しそうな顔をするので光は慌てて弁解した。
「嫌やないっすよ!!…ただちょっとビックリしただけっすわ…///荷物持ってくるんで待っとって下さいっ!!」
赤くなりながらも言った光の言葉に白石は微笑んだ。
***
「白石部長ー。何で今日はいきなり来てくれたんすか?」
「財前に会いたかったんや。それに言いたいこともあったしな。」
「言いたいこと?なんすか?」
「まぁ、家族にも散々言われたと思うけど…財前、誕生日おめでとう。」
「覚えててくれたんすか…?」
「当たり前やろ!!可愛い恋人の誕生日忘れるわけないやん?そんで、誕生日プレゼントなんやけどな……勿論、俺からプレゼントはあるんやけど…財前がして欲しいことあらへんか?」
「して…欲しいこと…?」
「せや。財前がして欲しいこと叶えてやりたいんや!!」
笑顔で自分の願いを叶えたいと言う白石にドキドキしながらも、光は前々から思っていたことを口にした。
「…なんでも…ええんすか…?」
「おん、なんでもええで!!」
「…せやったら……名前…読んで貰えますか…?」
「名前?」
「…―ッ///…やっぱええで「光。」ふぇ?」
「光。」
「…あっ///」
「光。」
「…―ッ///…もう、ええっすわ!!」
笑顔で自分の名前を優しく呼ぶ白石に光は恥ずかしさて顔を隠した。
「クスッ。ひーかーる?顔隠さんで見せてや?」
「嫌や…///」
「ホンマ可愛いやっちゃなあ。他には?他にはして欲しいことないんか?」
「………手…///」
「んっ?」
「…学校…着くまでででいいんで……手…繋いじゃダメ…ですか…?」
「クスッ。ホンマかわえー。ええよ?学校着くまでどころか着いたってずっと繋いでたるから…。」
可愛い恋人のあまりにも可愛いお願いに白石はとろけそうな笑みを浮かべ、緊張しているであろう恋人の自分より小さな手を取り優しく握りしめ、学校への道のりを普段よりゆっくりとしたペースで歩き始めた…。
繋いだ手から伝わる願い
(好き、という)(気持ちが)
(もっと伝わればいい。)