今、俺は自信をなくしている。
それはなぜかというと…
「財前!!右いったで!!」
「了解。左っスね、ユウジ先輩。」
こいつのせいやっ!!
今はダブルスの試合の真っ最中。もちろん俺のパートナーは小春や。相手は謙也・財前ペア。俺はいつものように得意のモノマネで謙也の声マネをして「財前!!右いったで!!」と、ボールを打ち返した方向と真逆の方向を財前に教えた。けど、財前は俺の声マネに引っかかることなく、真っ直ぐにボールを追いかけていた。財前が打ち返してきた球は俺が反応する前にコートに叩きつけられていた。呆然としていた俺は試合の審判をしていた白石の声で我に返った。
「ゲームセット、6‐4で財前・忍足ペアの勝ちや」
どうやら今の一点が最後のポイントやったらしい。一心同体少女隊修行をしている俺と小春に敗北はあらへんはずやのに負けた。やけど、今の俺には勝敗なんてどうでもええ。それよりも気になる事がある。俺は試合が終わりコートから出ようとしている財前を呼び止めるために走った。
「ちょっ、待ちや財前!!」
「…なんスか、ユウジ先輩?」
「お前、なんで謙也本人の声なくて俺がマネした声やって気がついたんや?」
さっきこいつは言ったんや、謙也の声マネをして指示をだした俺に向かって「ユウジ先輩」って。
「はァ?何の話っスか?」
「とぼけんなや、さっきの試合の最後んときや!!謙也の声マネした俺にユウジ先輩っていったやんけ!!」
「…あぁ―。そないなこと言いましたっけね。…それがなんスか?」
「やからっ!!なんでわかったんか聞いてるんや!!」
「……。」
「俺のモノマネは完璧やったはずや!!なのになんでや?」
「…なんとなくっスわ。」
「はァ?そんなん理由になってへんやんか!!」
「どーでもええでしょ。たまたま俺がユウジ先輩のモノマネを違うと思った。それだけっスわ。」
「そんなんでなっとくできるか!!」
「んじゃ、この話は終わりっちゅーことで。」
「おい、こら、待てや!!財前!!」
なっとくできひん。俺のモノマネは完璧や。その証拠に謙也やって、白石やって、千歳やって、金ちゃんやって俺のモノマネに騙される。みんな騙されるはずや…なのに…なのにアイツだけは…財前だけは俺のモノマネに騙されへん。なんでや。なんか足らへんのか?なんか足らへんから財前には俺のモノマネが通用せんのか?財前を見とったらわかるんか?
その日から俺が財前を観察する日々は続いた。