君は外で何をしているの





なあ、謙也さん。俺は謙也さんが“好き”やったよ。謙也さんと同じ“好き”やないけどそれでも俺は謙也さんに憧れとったしダブルスやって組めて嬉しかったよ。俺は謙也さんとはずっとええ先輩後輩でおれるって思ってた。やけど、謙也さんはちゃうかったんやね。なあ、謙也さん……何でこんなことになってしまったんやろか……。謙也さん…謙也さんの“好き”ってこういうことやったん?



……謙也さん、俺の声届いてますか…?



***



光は謙也の部屋にいた。手足には鎖がついておりそれは自分で外すことはできない。叫んで助けを呼ぶことはできるが光はそれをしない。いや、できないといったほうが正しいだろう。
光は謙也に捕らえられたときある約束をさせられていた。その約束というのは叫んだり泣いたりして謙也以外の人に助けを求めないという約束だ。この約束を破れば光の大切なものを傷つけなくてはいけない、と謙也は言った。
光はその言葉のせいで動けずにいる。家族や部活の仲間たち、たくさんの大切なものたち。謙也にとっても部活の仲間たちは大切なものだろう。だが、光を捕らえる為ならば謙也はなんだってするだろう。それが恐ろしくて光はなにもすることができない。光は今日も謙也の部屋でじっとしているほかになかった。

(どうしよう。このままここにいたらアカン。はよ、逃げな…。やけど俺が逃げたら……、)

謙也のこと、家族のこと、部活の仲間たち、自分が置かれた状況、今の自分ができること、光の頭の中で色々な考えがグルグルと回る。

(考えたってしゃーないんかな…。俺はここから出れへんのやし…。……やったら俺にできることは一つしかあらへんよな…。あーあ、こんなん分かりとうなかったわ。まだまだやりたいことたくさんあったやけどなあ…。もし願いが叶うんやったら…最後に…最後に…)

「最後に…もう一回先輩らに会いたかったな……。」



このとき光は知らなかった。自分が無意識にはっした言葉を謙也が聴いていたなんて……。



「ただいま、光!!」

「……。」

「なあ、光。おかえりって言ってくれへんのか?」

「……おかえり…なさい。」

「おん、ただいまやで光!!…またご飯食べてないんか?アカンやろちゃんと食べな…。」

「……。」

「なあ光…。何やったら食べられるんや?善哉やったら食べてくれるか?……それとも……。」

「……?」

「明日はおいしいご飯作るかんな!!…待っててや……。」



***



謙也の様子がおかしい。いや、おかしいのは今に始まったことではない。光をこの部屋に閉じ込めたあの日から……もっと前から謙也はずっとおかしかった。だが今は前とは何かが違う。何が違うのかと言われても帰ってくるのがいつもより遅くなったりするぐらいだが。少しの変化だが光の不安を煽るには十分だった。そして極めつけは抱き締められたときに謙也からわずかににおった異臭だ。何故そんな異臭が謙也からしたのかはわからないが、その状態で謙也は満面の笑みを浮かべ、光に言ったのだ。

「光っ!!もうちょいで光が好きなもんぎょーさん食わしたるかんなっ!!」

(嫌な予感がする…。なあ、謙也さん…あんたは一体何をしようとしているんですか……。)



君は外でなにをしているの










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