***



「白石くーん、期末テストの結果出てたよー!相変わらず見事に1位!」

「白石くんってほんと何やっても完璧だよね!」

蔵ノ介の周りに女子生徒が集まる。そんな光景を見ながら周りの男子生徒は呟く。

「なんでアイツばっかりモテるのかな…」

「あー?そんなん聞くまでもねーだろ、ルックス良し、頭良し、女子への振る舞いは紳士!!まっ、極め付きは……悪魔界の王子様、未来の国王様ってとこだよなぁ」

蔵ノ介はそんな声に耳を傾けながらも自分の席へと座る。そして自分の周りにいる女子生徒達に声をかける。

「ほら皆さん、そんなことで騒いでないで…、そろそろ説明会始まるみたいですよ。」

「「「「は〜い!!」」」」

蔵ノ介がかけた声によって女子生徒達が自分の席についたとき、タイミングを見計らったように先生が教室に入ってきた。

「今年度からは卒業対象者には人間界へ短期研修に行ってもらうことになりました。人間の中には我々の想像を絶する力や頭脳を持つ者もいるそうです。天界人共が人間の力に目を付ける前に我々で人間を潰しておくのです。」

宿敵である天界人との来るであろう未来の戦いについて先生が話していく。人間界と天界人が手を組めば魔界は不利になるだろう。その様な状態を避けるためにも短期研修という形で課題が与えられる。

(人間界…か…。)

蔵ノ介が思考を巡らせていると、それを遮るように先生から呼ばれる。

「白石君、君への課題は別室で…。」



***



「さて、コレがあなたへの課題です。」

「!?…あの…、これは…。」



『近い将来魔界の未来を脅かす人間と出会うであろう。その者を見つけ出し魂を奪ってくるべし』



「数十世紀ぶりの閻魔様からのお言葉です。」



『未来は全て“魔の紅眼(クレナイ)”が導くであろう』



「………それは…。」

「この予言は“魔の紅眼(クレナイ)”の後継者、王子であるアナタにあてられた使命なのですよ…次期魔界国王、白石蔵ノ介王子。」

「……しかし、この眼はまだ…」

「王子、時が来たのです。“魔の紅眼(クレナイ)”が長い伝説から目覚めるときが…。ターゲットの居場所は特定できています。あとは“魔の紅眼(クレナイ)”に全てをまかせるのです―――」



***



意識が浮上する…。夢をみていた。課題を与えられた時の…自分が次期魔界国王として…王子としてやらなければならないこと…。

(…ああ、そうや…早く見つけへんと…その“悪い人間”を…)



ばちっ



ひょこ



(!?)



目を開けた蔵ノ介に最初に飛び込んできた景色は少年の顔だった。少年は蔵ノ介の顔を見て微笑むと声を上げた。

「あー!!よかった、目ぇさましたで二人共ーーっ。」

「??」

(えっ…、なんやここ…なんで俺は布団に!?)

パニック状態の蔵ノ介を置いて少年の声に応えるように二人の子供が走ってくる。側に来た子供たちは蔵ノ介を見ると謝ってきた。

「ごめんな兄ちゃん、大丈夫!?」

いきなり謝ってきた子供たちに蔵ノ介は呆気にとられた。

「頭は!?」

「へ…平気…。」

「顔は!!?」

「だ…い…じょうぶ…。」

蔵ノ介と子供たちのやりとりを見ていた少年は溜め息をついて安心したように、それでいて怒ったように話し始めた。

「はーよかった…、だからあんなとこで練習したらアカンって言うたやろ―――」

「…ごめんなさい。」

子供たちが素直に謝ったことに満足したのか、少年は子供たちへ笑顔をむけた。

「ほらっ、二人共今日は手伝ってくれるんやろ?台所行き。」

「はーい。」

そんなやりとりを見ていた蔵ノは少年に向かって声をかける。

「…あ…あの――…。」

「あ!、えーと、すいません。今、何か飲み物持ってくるんで。」

「あ、いや、あの…。」

「もう少しゆっくり休んでて下さい。」



パタン



少年はそう言うと行ってしまった。蔵ノ介は何故自分がこんな所に居るのか記憶を巡らせる。少年が居なくなった途端にどこからともなく小石川が現れる。

「……!あぁ!ボールが…」

「“このオレがミスなんてするわけないやろ”やっけ?」

「…うるさいで、小石川…。」

「ほら見いや、言わんこっちゃないやろ。」

「ひっ久々に解放されたからちょーっと気が緩んだだけやっ!!」



ガタッ



「悪いけどコーヒーとか洒落た物はうちには置いてへんくて…お茶とかで大丈夫っスか?」

少年が入ってきた事に焦り、小石川を布団の中に急いで隠す。

「ところでアンタ、どこの人ですか?ここら辺じゃ見かけへんけど。」

蔵ノ介は一瞬迷うも、自分の事情について不自然じゃないように話す事にした。

「へ――!15歳で留学なんてかっこええね。」

「そ…そうか…?」

「つーことは高校もこの近く?俺は明日入学式なんやけど―…、」

(なんなんやろうこいつ……、お互い初対面なのにこの警戒心の無さは一体…)



ふわっ



少年が呑気に話しているのを見て蔵ノ介が考えていると少年は手を伸ばし、蔵ノ介の額に触れた。



「うーん、やっぱまだ少し腫れてるなー…、ごめんな。」

(……?なんや?今、一瞬……)



少年が触れたことに蔵ノ介は一瞬、違和感を感じた。



「あ、よかったらお詫びに夕飯食べてってや。」

「は?いや、お詫びって…別に…。」

「あのストライクボールうちの当たりくじのせいやから。」

「…当た…?」



蔵ノ介が突然の提案に驚き混乱していると、台所から子供たちの焦ったような声が響いた。



「光兄―!!!魚こげそう!!どうすんのコレどうすんの―!?」

「ちょい、待ち!裏も焼くんや!!」



子供たちの焦った声に少年も焦ったように台所へと走ってゆく。残された蔵ノ介は呆然と布団に座っているしか出来なかった。

「…………帰りそびれた。」

蔵ノ介が夕飯を食べることはもう既に決定事項のようだ。

(なんか調子狂う。)










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