“紅”
それはボクだけに
与えられた
未来(セカイ)―――
***
「お前、今日こそちゃんと持ってきたんだろうなぁ?」
「もっ…持ってきたよ…」
1人の少年を取り囲むように男が2人。そんな光景を観ている少年がまた1人。
(中高生などの若者を中心に行われる恐喝行為――。そういうの何て言うんやっけ。…あぁ、“カツアゲ”やっけ?まぁ、そんなんどうだってええけどな。)
「……はい。」
「サンキュー、はじめっから素直に出しゃいんだよ。」
「そうそう、ちゃーんとその内返すって言ってんだからさー。」
(あーあー、可哀想に。あんな奴らに金なんて渡してもーて…そろそろ観察も飽きたし動くとしますか。)
「お兄さんたち、楽しそうやな、俺もまぜてや?」
「は?何だおま…」
ガチャ
少年は笑いながらカツアゲをしていた男の背に水鉄砲のような銃をつきつけた、そして―――
ドンッドンッ!!
「…うっ…」
「うっうわああああああ!!」倒れた男達をみて、カツアゲされていた少年は怯え逃げ出す。そんな少年の背を目掛けて先ほどと同じように銃を構える。
「あ。お兄さんもせっかくやから―――
ドンッ!!
…嫌なこと全部忘れちゃえばええよ。」
「………っ!?……あ…れ?ぼくは…今…」
「………?あれ、オレたち…今…」
「……?」
「「「何してたんだっけ…?」」」
3人の少年達が目を開けたとき、すでに少年の姿はなかった。
***
少年は木の上で笑う。まるで誰かと会話するように…。
「まったく人間ってのはやることが低レベルやな。悪戯(イジメ)2つに脅(ヨワムシ)1つ。」
「蔵ノ介。あんま調子こいて遊んでると天界の奴らに感づかれるで?そろそろやめときや。」
少年の名は白石蔵ノ介。そして蔵ノ介の言葉に答えるように何処からか現れて周りを飛んでいる白い浮遊物は小石川健次郎。
「これくらいへーきやって。それに今のは人間界的に問題ないやろ。カツアゲから救ってやったんやし。」
「オマエ的には大問題やけどな。」
「わかったわかった、ほんならバレへんようにもうちょい大人しくするわー。」
「いや、やけどな〜〜。」
「もーー。うるさいなあ、ええやんか1日くらい遊ばせてーな。ストレス発散くらいさせてや。」
「しっかしな〜〜。」
「小石川。オレは“悪魔”なんや。やから、人間界で良い子になる必要はないんや。」
蔵ノ介はそう言うと木の上から飛び降りる。その際蔵ノ介の頭には角が、そして背中からは黒い翼がはえる。それはまるで悪魔のような―――。