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白尾涼子

彼女は普通の家庭に生まれ、

普通の環境に育ち、

普通に生きて来た。


どこにでもある普通の人生。



だが…本当は生まれはならない存在だった。
その代償に幸福と不幸が取り換えられた。望んでもいないのに――…。

それでも彼女自身の才能は壊されなかった。


彼女は6歳までは幸せであった。
だが、ある日突然…世界が逆さまになるほどの不幸が取り付いた。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


氏名:白尾涼子

0歳―生まれる
5歳―交通事故に合い、奇跡的に助かる
6歳―父親の様子が可笑しくなる
7歳―突然の離婚 兄と生き別れに
10歳―裁判で負け、神を、愛を、父親を憎む
11歳―祖母の家に引っ越す
13歳―希望を失う
15歳―高校受験




涼子は自分の才能と可能性を秘め、志望校の受験に励んだ。
それも一か八かの博打の受験。




そんな時だった―――――――…




『(………私多分死ぬんだ)』


受験会場に向かう途中、飲酒運転のトラックが涼子をはねた。

しかも、その周りには誰も居ず…誰も助けてくれなかった。



死ぬ恐怖など全然なかった。
逆に不幸から解放される事に喜びを感じていた。

ただ1つ…母親に罪悪感を抱いて…。




『(お母さん…親不孝な娘でごめんなさい……)』



幸福は彼女を許さず…
不幸は彼女を愛した。

最後まで…死ぬ最後まで。


もし、未来が変えられていて涼子が生きているのなら…。

受験に合格し、憧れだった学校の制服を身にまとい桜の下で笑顔で笑っていた。






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



氏名:白尾涼子
別名:不幸に愛されし者


15歳―この世を去る




「白尾涼子。死亡しました」
「運命を背負ったまま…転生します」




彼女は大好きな兄と一緒に見ていた『テニスの王子様』の世界へと転生された。
…異物としてではなく本物の世界の人間として。
それも"完結"したテニスの王子様の世界に。




きっとこれから不幸を背負ったまま大嫌いなアイツと運命を歩むのだ。




全ては神が涼子に捧げた精一杯の償い。


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