☆rkrn/伊食満


「悪い夢を見たんだ」

ランチの途中で少し困ったよう
に眉を寄せて笑ってみせた。伊
作は目を丸くして、得に重要な
話だとは思っていないらしく、
軽く「へぇ、どんな?」と日常
会話のように返してきた。

その時は話して聞いてそれだけ
だったが、夜風呂から出てきた
ときには伊作はすでに寝巻き
で、布団を敷こうと思って伊作
の横を通りすぎると、足首をも
たれた。

「一緒に寝るぞ」
「は?」

なんだよそれ、いい歳して恥ず
かしい。そんな言葉も喉に詰
まって口に出ることはなく、パ
ニックになっていると、首をか
しげて「ね?」と言われてうか
つにも、コクンと頷いてしまっ
た。

今まで伊作とこんな状態で寝る
のは初めてで、ずっと俺の手を
握っていて、やめろと言ったの
にずっと顔を見合わせて寝た。

その夜は悪い夢を見なくて、
ゆっくり寝れた。目を覚まして
も伊作は目の前にいたし、手を
握っていた。

「おはよう、留三郎」
「悪い夢が、ずっと続くと思っ
たんだ」
「そうなんだ。いつでも言っ
て、相談に乗るよ。僕は留三郎
が好きだから」

にっこりした笑顔がまぶしすぎ
て、そんなことを言ったら好き
になってしまうじゃないかと流
されそうになっている自分には
気づかずに、俺は少しホッとし
た。