涙 | ナノ




 目の前に佇む
 きみの目から、
 輝くなにか。



 それを涙と呼ぶのだと、僕は知っている。
 知っているのに、理解ができない。
 知っているけれど、分からない。ただの“知識”として僕の脳みそに存在するだけ。

 何でなんだよ、ときみは言った。
 その表情は笑顔ではなくて、けれど決してかなしいだけのものでもない。
 頬に触れようとすると、その手を払われてしまう。
 どうしてなの。
 僕が、悪いのかな。
 ごめんなさい。
 どうして謝るのかさえ、分からない。



 強引さすら感じる力強さで、冷たい身体を抱きしめられた。
 ああ、人間というものは、こんなにもあたたかいんだね。
 体温というのは、ここちのよいものなんだね。
 優しいものなんだね。
 きみは、優しい人なんだね。



 ――裕太。

 ありがとう。
 僕のために、泣いてくれるの?
 泣き方すら忘れた僕のかわりに、きみはきれいなそれを流してくれるの?

 ――ありがとう。



 嬉しいのに、泣きたいくらいに嬉しいのに。

 やっぱり僕の瞳は乾いたままだった。










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去年の六月くらいに書いた裕太×周助を今更載せる。
表紙を描いて頂いたり、いつもお世話になっているアメーバさん(PCサイト)への誕生日プレゼントでした。

2012.2.17.

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