錆びたココロがIと叫ぶ | ナノ
※アンドロイド柳生と科学者仁王の小ネタ
六月某日、午後四時三十七分二十一秒。
――“わたし”は、目覚めた。
「おはようさん。気分はどうじゃ?」
「――おはようございます。回路に異常、不良箇所はありません。いたって良好です」
「はは、そうかそうか。自分のことは分かるか?」
「理解しています。わたしのこと。わたしはあなたに創られた存在です。個体番号はYG-HRS001……」
「あー、ごめん。そういうこととは違うんじゃけど……まあ、ええか」
わたしの、人間でいうところの眼球と同じ役割を担うそれが、わたしの製造者である人物の姿を捉えた。
銀色の髪と金色の瞳、顎に特徴的な黒点を持つ人だった。
彼はわたしの頭部に軽く触れ、僅かに口元を緩ませる。
「比呂士。……今日からはそれが、お前の名前じゃ」
この表情をなんと呼ぶのか、当時の“わたし”は、まだ――知らない。
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2011年6月18日携帯サイトmemoより、アンドロイド柳生×彼を作った科学者仁王。に、少しだけ加筆修正。
実は比呂士は亡くなったかつての仁王の恋人の外見そのままに創られている、ということをアンドロイド比呂士が知ってかなしくなる、というベタな話。