SSS詰め合わせ03 | ナノ





仁王君に勧められた小説はとても面白いものだった。感想を伝えると、彼は「お前は絶対好きだと思ったよ」と笑う。趣味嗜好はまったく合わないのに、なぜか彼は私の好みをよく理解している。――“落ちる”理由なんて案外単純で、それだけあれば十分なのだ。

柳生×仁王『恋している理由』





好きでやっていることですから、と言った柳生の頭を撫でた。奴はいつだって優等生なのだ。気を抜くことができない。俺はそれを知っているからこうしてたまに頭を撫でる。こいつには俺がいないとだめだな、と少し笑って、自分の気持ちに気付いたのはその後だった。

柳生×仁王『恋している理由』





――口角を上げた時の、頬が痛い。いかにも幸せですみたいな表情をしている比呂士の頭を軽く殴った。少しの勇気を振り絞って、想いが実って、奴に恋人ができた。彼女と肩を並べて笑う比呂士の姿を見ると、無理矢理上げた口角の端が、頬が……胸が、痛くなる。

柳生×丸井『痛みの理由』





もう少しうまいやり方もあったのでは、と目の前にある怪我をした膝小僧に絆創膏を貼りながら考えた。「丸井君」へらりと笑った彼の瞳が哀しい。「――泣いていいんですよ」ああ神様、後輩の為にわざと敗北を選んだ私達のことを、どうか笑わないでいてくれますか。

柳生×丸井『誰もいない保健室』





眠れない日は柳生に電話をかける。生活リズムまで規則正しい優等生は、それでも夜中に起きて話に付き合ってくれる。その事実を嬉しく思いながら、ひどく切なくなることがあるのだ。心が抉られるように。「……なあ、子守唄歌ってくれん?」俺しか知らない、俺だけの、

柳生×仁王『真夜中の秘密』





馬鹿ですね、と、もう何本目かのバスを見送った柳生は言った。柳生がいつも持ち歩いている大きい折り畳み傘から雫が落ちる。見なかった訳じゃない、お前がそんなだから天気予報を無視したのだ。雨がやむまでバスに乗らないつもりの柳生の優しさに浸っていたいから。

柳生×仁王『この雨がやんだら』





「では、また明日」自分の家を通り過ぎて、俺の降りる駅まで隣に座っていた比呂士が目を細めて笑った。知ってる。俺がうっかり告白なんてしたから、奴は義務を果たしているだけ。期待なんてしていない。優しいふりをしているだけ。――その切なげな瞳も、気のせいだ。

柳生×丸井『やさしいフリで』





そんな恋やめてしまえ、と簡単に言えたらどれだけ楽だろう。好きなんです、愛しているんです。何度耳にしたか分からないし、聞かなくても分かる。柳生は”奴”を好いている。想いの先は俺じゃない。「……いつもごめんなさい、幸村君」欲しいのはそんな言葉じゃないんだよ。

柳生×幸村『傷ついても』





公衆電話からの着信が残っていた。「やあ、蓮二」から始まる幼馴染の声は淡々としている。あまりにも落ち着いた声を聞きながら鼻で笑うと、俺はそのメッセージを消去した。掛ける相手は決まっている。「――それで、何の用事だ、“仁王”」俺を簡単に騙せると思うなよ。

柳×仁王『留守番電話』





お前なら大丈夫だ、という言葉に、俺は静かに微笑った。真田はまっすぐな奴だ。確固たる信念と自信を持っている。いつだって前しか見ない。だからそんなことが言えるのだ。俺の病気は俺にしか分からない。身体の感覚を失っていく俺に、真田は笑って、大丈夫だ、と――言う。

真田×幸村『こころの闇』





――柳生の親指が喉仏の横に食い込む。この感触を忘れないでおこうと思った。なによりも愛しくて、苦しくて優しいこの温度を。泣きながら俺の首を絞める柳生が、今日、親に何を言われたのかは知らない。隣にいられない理由なら、そんなもの必要ないと思った。

柳生×仁王『どうでもいい、そんな日々』










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あまりにも柳生しか書いていなかったので途中でしれっと別カプ挟んだんですが、やっぱり最後にでしゃばる柳生。

2014.5.31.

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