サンプル3 | ナノ





●本文サンプル3

 落ちかけた陽に身体を温められながら帰路に就いた。
 俺の三歩先を歩く丸井が、「ようやく解放された」とでも言いたげに肩を鳴らす。面倒くせえなあ、という溜め息混じりの声を聞かなかった振りができる程俺は大人ではない。
「不服そうだな」
「だって、別に困らなくねえ? 超能力者みてえで格好良いじゃん」
「お前は少しばかり軽率すぎると思う」
「他の奴等が堅苦しいだけだろい」
 けたけたと響いた笑い声に怖気がする。文学でよく見かける『住む世界が違う』という言葉の意味を俺は初めて知った。奴は今日集まった人間の中でも飛び抜けて異端だ。選ばれた自分に――“呪い”に、誇りを持っている。
「……誰もが全員、特別になれるわけじゃねーんだよ」
 前方に伸びた影は奇妙に、目の前に立つ男の表情を隠す。
「平凡なんてまっぴらごめんだし。折角能力者になったんだぜ? 特別であるうちに楽しんでおかねぇと」
 色素の薄い瞳に、醜く歪んだ闇を見た。



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