サンプル2 | ナノ





●本文サンプル2

「ですから、ちょっとキスをするだけでしょうが」
「なんでそんな平然ととんでもないこと言うんスか、アンタ馬鹿なの!?」
「成績は極めて優秀ですけど」
「そういうことじゃなくて!」
 この柳生比呂士という男はどれだけ俺をダシにすれば気が済むのだろうか。本気でそう思う。しかしそれは切原も大概だ。俺は仁王センパイみたいな趣味してないんで、って、人をホモみたいに言わないでほしい。誰が好んで男とキスなんざするか。柳生とはほら、事情が事情だから仕方がない。これが美少女ならどれだけよかったことか、とこれでも毎回考えているのだ。
 柳生は先程から何が不満なのか分からないとでも言いたげに首を傾げているが、切原の意見はもっともだと思う。俺はお前の方が理解できない。
「ほら、初めてなら、やっぱ相手は可愛い女の子がいいっていうか」
「我侭ですね」
「人並みの理想持って何が悪いんスか!」
「じゃあ、ここから五十メートル離れた地点から細目で仁王君を見てみてください。ほら、なんとなーくどことなーく可愛らしく」
「見えねっスよ」
「まあそうでしょうね」
 じゃあ何で言うたんじゃお前。いい加減にしろ。
 柳生は困った表情でこちらを見つめてきたが、知らんがな。助け舟なんて出してやらん。
「っ……じゃあ、もういっそ中身はいいんで。柳生センパイ、誰か美人な女の人と入れ替わってきてくださいよ」
「えっ、嫌ですよそんなの」
「この人でなし!」
 俺もそう思う。割と真剣に。



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