SSS詰め合わせ01 | ナノ





性格、家族構成、ふとしたときの癖。お前のことなら誰よりも詳しい俺が、俺だけが知らなかった。ごめんなさいと言って姿を消したお前に、俺は突き放されたのだ。結局俺はお前のことを何も分かっていなかったんだと思う。ああ、せめてその薬指に、おめでとうって言いたかったよ。

柳生×仁王『なんだって知ってた』





彼は魔法使いなのではないかと、柄にもなく考えることがある。性質の悪い悪戯に手を焼いたり、かと思えばどこからか飴玉やタンポポを取り出して差し出す。すべてが彼の“魔法”だ。私はきっと自分のことにしか使えない。魔法を使えなくてよかった、と空を仰いだ。 

柳生×仁王『もしも魔法が使えたならば』





「いい加減素直になればいいのに」目の前の男が言い放った。俺は舌打ちをして馬鹿じゃねえのと返す。眼鏡の向こうの瞳は間違ったって紳士なんかじゃない。ムカつく野郎だなと思った。そんな言い方、まるで。(俺がお前のことが好きみたいじゃないか)言ったら負けだと思っている。

柳生×丸井『大人しく降参して』





はあ、と吐いた息は白くなって空に消えた。街灯の少ない通りから見える空は綺麗だ。オリオン座がはっきりと見える。今年もあと数時間も経たぬ間に終わる。人手が足りないからと入った大晦日のバイトは暇だった。一人きりの年越しは寂しい。無性にあの詐欺師に会いたくなった。

仁王×幸村『残された時間』





こんなガキが他にいるか、と俺は思わず苦笑した。親がいないからと家に招いた時からずっと、奴は俺の膝を枕にしてそれっきりだ。目を細めて奴の髪を梳く。下の弟がそっとこちらの様子を窺っている。俺はそれに人差し指を立てて、ごめんなと呟いた。――ごめんな、今日だけは。

柳生×丸井『先着順』





大晦日の神社は人で溢れていた。震える指先を誤魔化すように息を吐くと、くすりと笑った柳生がカイロを差し出す。手を伸ばすとそのまま柳生に手を引かれた。「大丈夫、これだけ沢山いるのですから、私達のことなんて誰も見ていませんよ」あーあ、年の暮れまで腹の立つ。

柳生×仁王『寄るな、色男』





なんとなく切ない気分になることくらいある。それでも携帯電話のディスプレイに映し出された名前を眺めるだけにとどめていた。それが今着信音を伴って目の前にある。「……もしもし?」淡々とした声は、普段より少し上ずって聞こえた。『たまたま、声が聞きたかったんだ』

柳×幸村『重なった偶然』










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今年もお世話になりました。

2013.12.31.

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