愛をいただきます! | ナノ
タン麺が食いたい。
ジョウの寿司が食いたい。
ビー玉の入ったラムネが飲みたい。
オムレツが食いたい。
メロンが食いたい。
デニッシュロールが食いたい。
トマトジュースが飲みたい。
ウナギの蒲焼きが食いたい!
立て続けにメールを送ると、間もなくヒロシから返信があった。
『今度、ホテルのバイキングにでも行きますか?』
そうじゃねーだろ。いや確かにバイキングは好きだ。好きだけど! 違うだろ!
余りの間抜けな展開に携帯電話をへし折りたくなるくらいの怒りを覚えた。しかし勿論そんなことをしたら損をするのは百パー俺だからやめた。
冷めきらない苛立ちを腹に抱えたまま、返信画面を呼び出す。
『馬鹿、アホ、エセ紳士!!!!!!!!』
……これくらいの罵倒は許されるだろう。
俺より頭がいいんならこんな初歩的なミステリーくらい解けよ。さては本格派の推理小説がお気に入りなんて見栄だろ。今度読んでいる場面に遭遇したら絶対に鼻で笑ってやる。
時計を見ると零時を少し過ぎていた。
恋愛方面でのお付き合いというのは、こんなにも今まで簡単にできていたことができなくなるものだろうか。去年までの俺なら絶対直球だった。回りくどいのなんて面倒くせえだけだし。
けれど今年はどうしても気恥ずかしかった。
だからヒロシより全然足りていない頭を使って、必死に考えた方法を使ったのだ。
(……アホは俺だ)
俺らしくもないことを。
携帯電話がメール着信を知らせて震えた。送り主は当然、今いちばん会いたいような会いたくないようなアイツだった。
どうせご機嫌取り丸出しの内容なんだろうな、と憂鬱になりながら最新のメールを開く。
タイトルに、『ごめんなさい』と記してあった。
『あなたがあまりにも素直でないものだから可笑しくて。
お祝いの言葉、ありがとうございます。』
――ああもう。腹立つな。
結局俺はコイツには敵わないのだ。頭脳も、テニスも、目鼻立ちも。
チクショウ、なんて呟きながら、実はそこまで嫌だと思っていないことにも気付いてる。俺は溜め息を吐き、ようやく自分の負けを認めて通話ボタンを押したのだった。
『タン ジョウ ビ オ メ デ ト ウ』
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回りくどい愛の言葉。
2012.10.19.