ハニースウィート | ナノ




 誕生日プレゼントは何が良いかと尋ねると、でしたら膝枕をしてくださいと言われた。
 俺の膝の上、上機嫌で鼻唄なんて口ずさみながらごろごろする柳生の姿を見て、紳士の名が泣いてしまわないかと心配になる。
 大人びて落ち着きのある普段の面影はどこにも見当たらず、苦笑いを浮かべながら、なんだかんだこんな柳生を嫌いではなかった。
 素直に甘えられると少しだけ戸惑う。そしてそれ以上に嬉しい。
 体勢を変え仰向けになった柳生と目が合った。瞬間、ほころばせた表情には独特の少年らしさが残っている。
 伸ばされたあたたかい手が、ふいに頬に触れて。
 やれやれと溜め息を吐きながら柳生のくちびるに同じものを重ねるのだ。

 カーテンを揺らした風、しおりをはさんだ読みかけの本、空になったティーカップ。
 この部屋にいると時間を忘れたり、つい眠ってしまったりするのはきっとそこにある何もかもが甘いからだ。
 生クリームも、クッキーも、甘やかされることも得意ではないが、なぜだか落ち着くこの空間が俺はとても好きだった。
 おもむろに髪を撫でると、柳生は嬉しそうに目を閉じた。
 悔しいな、でも、いとおしいな。

「ねえ、仁王君」
「ん?」
「とても、幸せです」
「……うん」
「でもね、」

 この甘いあまい場所で、柳生はぽつりと呟いた。
 チョコレートが食べたいな。
 いつもと口調が違うその言葉に、俺は思わず笑う。
 ――どうやらこいつは、まだ糖分が足りていないらしい。
 本当に仕方のない奴だ。
 そしてこんな阿呆のことを好いている自分は、もっとどうしようもない人間なんだろう。
 もうそれで構わないと思えるほど、今のこの時を柳生と共に過ごしていたい。
 痺れ始めた足さえも幸福の象徴だ、なんて、さすがに言いすぎた気はしているけれど。

 俺は“おねだり”のへたくそな柳生の発言に目を細め、今度はもっと長いキスをした。










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Happy birthday 柳生比呂士! いつまでも好き!

2012.10.19.

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