体温 | ナノ
俺は泣いていた。
涙が止まらなかった。
もうどうしようもなかった。
「仁王君」
「……や、ぎゅ」
目の前の、優しいひとを見た。
彼は柔らかく微笑んで、俺の頭を撫でた。
あたたかい手だった。
「……やぎゅう」
“もし、いつか俺が、一緒に死んでほしいって言い出したら、どうする?”
柳生が好きだった。
好きすぎてどうしようもなかった。
もう戻れないところまで来ていた。
髪を遊んでいた指先が、俺の頬に触れる。
――柳生の、命の温度だ。
柳生はまた目を細めて微笑った。
「大丈夫ですよ。これから先、そんなこと考えつかせませんから」
俺はまた泣いた。
あたたかい涙だった。
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2012年1月8日〜2012年5月15日拍手お礼。
ネガティブ仁王とポジティブ柳生。足して割るときっとちょうどいい。