ジューク。



「何やってんの、あんた」

慌てる私をよそに、母さんはきょとんとしている。
おかしい。どういうことだろう。
何も言わないなんておかしい。
だって


「ご近所に迷惑だから、あんま騒がないでちょうだいね。
 あんたもう高3でしょ。」

「うん…ごめん」

「あ、夕飯そろそろだから。着替えて降りてらっしゃい。」

「ん、わかった」


 ばたん。



「いやぁ、ひやっとしましたねぇ。」
にひゃ、っと間の抜けた笑い方をしながら、ジュークが口を開いた。
彼は別にどこかへ隠れたりなんかしていない。
ずっと、ここにいた。
なのに。

「言い忘れてましたけど、」

声のトーンが少し下がった。


「私、普通は見えないものなんですよ」



意味が分からなくて

考え始めた頭がぐるぐると

とまらない

どういうこと



視界が

  ぐにゃりと

 ゆがんだ

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