案内人、19(ジューク)。

何が何やら、分からない。
目の前には急に現れた青年が笑顔で
すばらしく良い姿勢で立っている。

白い上下のスーツに黒のシャツ、
ブロックチェックのネクタイ。
肌の色は男性にはもったいないほど真っ白で、
長いまつげに目鼻立ちの整った顔。
平たく言うと、かっこいい。

『私、TIME IS MONEYより貴未さまへ派遣されました、
 案内人でございます。
 まずお聞きしたいのですが』
「ちょっと待って」
『はい?』

お聞きしたい事があるのはこっちの方だ。
急いで話を遮ると、
なぜか向こうも、急いでアタッシュケースを開いて
なにやら本のような物を取り出した。
……マニュアル、だろうか。まぁいい。

「どこから入ってきたんですか、いつから、いたんですか?」

きょとん。
まさにそんな表現がぴったりな顔をして、
青年は答えた。
「話しかけるほんの数秒前です。こう、瞬間移動で、しゅばっと」
…あたまが痛くなってきた。
分からないことだらけだし、
いろいろ驚きすぎた。
というかこの青年、まじめに答える気はあるのか。
間があいた事を質問終了と受け取ったのか、
青年は話し出した。

『本日は弊社ホームページにごアクセス頂き、ありがとうございます。
 登録画面までご覧になったようなので、
 つきましてはご利用計画の有無を伺いたく参りました。
 …えーと、ここまで良いですか?』

言いたい事は分かった。
けれどどう答えれば良いのかまでは分からないので、
とりあえずは頷いて見せた。

『こちら利用規約になります。
 ご一読頂き、同意されますと登録完了となります。』

割と大きめ、A3サイズのラミネートカードを渡される。
裏までびっしりと敷き詰められた文字の羅列に嫌気を覚えた私は
つるりと適当に流し読みしてそれを返し、

「同意、します。」

私は契約を済ませた。

暇な時間は山ほどある。
もし本当にそれがお金になるのなら、
これほど「有意義な時間の使い方」があるだろうか。

そんな、考えだった。

まさかこれが、私の人生に関わるほどの事件になるだなんて、
微塵も思いはしなかった。

この日を境に、私の人生は、
ピースの抜け落ちたジグソーパズルとなっていったのだ。

『了解しました。
 これにて、契約、成立でございます。』



ほんの少し、


青年は、悲しそうな顔をした。    

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