だいじょうぶ。

    雛実
      ヒナミちゃん
  ヒナ




   ぐすっ
     ぐすん…すんっ


 『雛実。』

……おかあ、さん。

 『雛実、どうして泣いているの。』

ヒナね、かなしいの。…さびしいの。

 『…どうして?お母さんに、教えてくれる?』

おとうさんに、会いたいの。

 『お母さんも、会いたいわ。』

おかあさんも、さびしい?

 『そうね、少しだけ。
  でも、お母さんには雛実がいるわ。
  雛実は、どう思う?』

……うん、ヒナも。
ヒナも、おかあさんがいるから、だいじょうぶ。

 『でもね、雛実はお母さんだけじゃないわ。
  トーカお姉ちゃんやカネキお兄ちゃん、
  芳村さん…あんていくの皆が、ついてるわ。』







  「ヒナ?」
トーカお姉ちゃんの声で目が覚めた。
ふわりと、コーヒーの香り。
…ここは…家じゃない。

 「ヒナ、起きたね。どうしたの。」
涙で顔が濡れているのがわかった。
半覚醒の頭で考える。
まだどこか、ふわふわした感覚が残っている。

 「夢を、見てたの。おかあさんの夢。」

 「ヒナ…。」

トーカお姉ちゃんの顔が、悲しそうに、
そして少し苦しそうに、歪んだ。

 「あのね、ヒナはだいじょうぶだよ。」

 「ヒナ、無理はしなくても」
 「ううん、ちがうの!」 

またお姉ちゃんが悲しそうな顔をしたから、
急いで伝える。
ちがうよ、そうじゃ、ないの。

 「おかあさんがね、ヒナはひとりじゃないよって。
  お姉ちゃんやお兄ちゃん、
  あんていくの皆がいてくれてるよって。
  夢にでてきて、おしえてくれたの。
  だからヒナ、もうさびしくない。
  もう、ひとりじゃないから。

  そうでしょ?お姉ちゃん。」

お姉ちゃんはなにも言わないで、
ただ、ぎゅっとヒナを抱きしめてくれた。

ほんの少し、おかあさんと同じにおいがしたような、
そんな気がした。





 おかあさん、ヒナね、さびしくないよ。

 もう、だいじょうぶ。

 だけどまた、ヒナがさびしくなったら、

 また、夢で会いたいな。

 
おかあさん、どうか、やすらかに。

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