partner's



「卒業までよろしく、レディ」



どうしてこうなったのだろう。
卒業試験のため、アイドル志望の子とペアを組むのは仕方ないことだ。
奇跡的にSクラスに入れただけの私とペアになる人なんて、生徒Aとか生徒Bとかで十分だったのに。
どうして、何故、どんな経緯でこうなってしまったの。



「クジで決まったのも何かの縁さ。俺じゃ不服かい?」



目の前の無駄に色気がある彼の言葉に首を振る。
神宮寺レンは学園一と言っていいほど人気のある人物だし、母親は元アイドルだし才能とビジュアルは遺伝子レベルで優れてる。
そんな彼のペアが私でいいのかという不安はもちろんある。
しかし、私自身 神宮寺が苦手だった。私は出来るだけ平和に学園生活を送りたい。
それはそれは普通に。いっそ地味なくらい。
その"地味"とは対極の所にいる男が神宮寺レンじゃないのか。
普通の交友関係を築くならまだしも、ペアって…
だって、彼と一緒にいたら私がこの学園に入学した意味ないじゃない。



「レディの噂は聞いているよ、美人で作曲の才能もピカイチだって」



美人。そう、私は性格は別として顔はまあ…自分で言うのもあれだが、悪くはない。
だから今まで言われもないことで女の子に妬まれたり、勉強して成績が上がっても贔屓だの何だの散々だった。
この学園に入ればアイドル志望で可愛い子なんてウジャウジャいる。
やっとあの泥沼から抜け出せると思ってたのに。



「レディならアイドルとしてもデビュー出来そうなのに、どうして作曲家志望なんだい?」



噂によれば神宮寺はかなりのフェミニストらしい。
どんな女の子にも平等に接するだとか。だから彼の周りにはいつも女の子がいる。なんでも、女子同士の争いが嫌いということだ。
女子同士の争い?はっ、そんなの日常茶飯事な生活をこっちはしてきたっつーのよ。
今日、たった今から、私がそのお取巻きに矛先を向けられることに神宮寺は気づいちゃいないんだ。



「…レディ?」



色んな考えが巡る中、私が今 一番言いたいことは、



『…神宮寺、とりあえずシャツのボタン閉めようか』



本当に、私はついてない。