委員長と愉快な仲間達 | ナノ
3


山田頼子が転校してきて数週間。
彼女の予想外の行動はクラス全員に知れわたっていた。

例えば全校集会で集合する時 集まりが悪いと、
『10秒以内に並ばないと髪型ベジータにするぞ!』
と叫んだり、
女子に遊びに誘われると、
『ごめん、今日株主総会あるから』
と断ったり。

しかしそんな変わり者の彼女にも関わらず、クラスメイトには人気があった。
明るいのはもとより、男女区別なく誰にでも変わらない気さくな態度。
見た目も男子たちの“クラスで美人なのは誰か”というくだらない話題で名前が上げられないことはなかった。
…あだ名は確か、委員長。



『やっぱり此処だったか』



屋上。
俺が授業をサボってうつらうつらしていると顔に影がかかった。
目を開けると、彼女が俺を覗き込んでいた。



「何でここにいるの?」

『先生があんたを呼んで来いって』



俺の隣に座って胡座をかく姿は顔に似合わずオヤジのようだ。



「ちょっと、居座るつもり?」

『私 理科嫌いだからさー。名付けて、折原探してる間に授業終わっちゃいました てへっ!作戦』

「俺を言い訳にしないで欲しいんだけど」



てへって何だ てへって…
イタイ子を見るような目で見てやるとそんな目で見るな!と怒られた。



『いいじゃん。隣の席のよしみで』

「何それ」



彼女は確かにオモシロイ人間だ。俺が出会った中で一番と言っていい。
けれど初めて苦手だと思った人間でもあった。
傍観者でいたい俺の中に土足で入り込んで来るのだ(認めたくはないが)。
しかしそんな彼女に興味をそそられる感情も否定は出来ない。
矛盾した気持ちがぐるぐると脳内で渦巻いていた。



「…あのさぁ」



ぐい、と二つに結ばれた髪を引っ張る。
すると委員長は倒れるようにして俺の方に顔が近づいた。



「あんまり馴れ馴れしくブフォッ!」



瞬間、みぞおちに感じた鈍い痛み。
今までに出したことない声に自分でも驚いた。



『顔近ェよ』



そんな声を最後に、俺は意識を手放した。


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