委員長と愉快な仲間達 | ナノ
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「委員長の二人だけでも今日中に決めたいんだが…立候補いるかー?」



担任の言葉に、生徒は誰も手を挙げず、周りを見渡す。



「無し、か…」

『あっ、あの…私やります!』



クラス全員の視線が俺の隣に集まった。
山田頼子はそんな視線は気にせず、席を立った。



「しかしなぁ…山田は転校してきたばかりだし…」

『大丈夫です!私頭より身体で覚えるタイプですから!』



ここまでやる気に満ちている奴なんて他にいるだろうか。
担任もそんな彼女を止めることなんてするはずがない。
もう一人の委員長は話し合いの末、出席番号が一番の奴に決まった。
まったく、御愁傷様としか言いようがない。




















「本当に絵に描いたような優等生だねえ」



真面目に担任の話を聞いている山田を見ながら言った。
山田は驚いたようにこちらを見てくる。



「委員長なんて面倒な仕事、誰もやりたがらないでしょ 普通」



だって先生が困ってたから…
なんて綺麗事を予想しながら苦笑する。



『だって…』



ほら、やっぱり、



『早く帰らなきゃ 競馬 間に合わないから』



………は?

思わず聞き間違いか?と耳を疑った。
どう考えても中二女子からはあり得ない単語が出てきた気がした。



「け……何?」

『競馬よ競馬!どの馬が何位か当てるやつ!』



そんなことは知っている。
俺が聞きたいのは何故こいつがそんな博打に手を出してるのかということだ。
いや、陰で野球賭博をしている俺の言えた義理じゃないが。



「君さ、それ犯罪なんじゃないの?」

『本当にお金かけるわけないじゃん。当てるだけよ。これが結構当たるのよねー』



ところで先生の話っていつ終わるの?
そう平然と聞いてくる彼女に、俺はぽかんとしてしまった。

俺らしくない。しかし調子を崩されるのはいつぶりだろう。
新羅と初めて会った時もこんな風だっただろうか。

…オモシロイ。

じわじわと膨れ上がる感情。
笑い出しそうになるのを堪えて俺は興味の欠片もない話をしている担任を見た。


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