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アラジンと行動を共にすることになってから数日。
この世界のことは、大方アラジンから聞いた。
迷宮(ダンジョン)のこと、自分達が迷宮でどんな冒険をして、どんな人々に出会ったか…
まるで小説や漫画の中みたいな話だったが、"異世界"と思えば全てが納得だ。
アラジンは一緒に迷宮で戦った友人のアリババという少年を探すため、彼の故郷であるバルバッドに向かっている。
「モルさんは〜 故郷の船に乗るためにバルバッドを目指してるんだよね」
モルジアナことモルちゃんは、故郷に帰るため、船が出ているバルバッドを目指しているらしい。
いやー、二人共私より年下なのにすごいな〜。
「はい…それと…あなたと、アリババさんに会いたいと思っていました。お礼がしたくて…」
「『おれい??』」
アラジンと一緒になって首を傾げると、モルちゃんは過去にアリババくんとアラジンに助けられた話をしてくれた。
自分が奴隷だった時、その身分から助け出してくれたのは二人だったと。
彼女に自由な未来を与えたのは、間違いなくアラジンとアリババくんという少年だ。
「そっか…よかったね。でも、僕もそうだけど、アリババくんはお礼なんかいらないって言うと思うよ!」
アラジンは照れ臭そうに笑う。
「だって、アリババくんはそういう優しい人だから!
あ〜あ、僕も早くアリババくんに会いたくなっちゃったな…」
『…私も二人の話聞いてたらアリババくんって人に会いたくなっちゃったよ』
「僕もリホお姉さんにぜひ会って欲しいよ!」
「…会えますよ、この道をたどれば」
「うんっ。そうだね!」
町についたらとりあえず色々調べよう。
ルフっていう不思議な力もあるんだ。きっと元の世界に戻る手がかりがある。
『バルバッドへはあとどの位あるの?』
「多分、今日中には着けると思います」
『ほんと?じゃあ急、』
ごう、と前を見た瞬間だった。
目の前には信じられない光景があった。
…いる。何がって、ほぼ全裸の男が。
しかも仁王立ちで。
「「『…………』」」
私達は咄嗟に固まった。
男は笑い、ゆっくりと口を開いた。
「やあ、君たち!今日はいい天気だね」
『ぎ、』
「ぎ?」
『ぎゃぁあああ!!』
「二人とも危ない!!下がって!!モンスターかもしれない!!」
「!?」
アラジンが前に出てくれたが、私は思わずモルちゃんとアラジンの目を隠した。
『こっ、子供は見ちゃいけませんんんんん!!!』
「大丈夫だよ!ここは僕にまかせて!」
一番NGな部分が大きめ葉っぱで隠れてるだけの長髪男。
変態以外の何者でもない。どこの世界でもこんな人はいるのか!!
私がしっかりしないと!
『ダメダメダメ!絶対ダメ!!あっち行け この変態!』
「えっ!?いや、違うんだ!!話を聞いてくれ!!」
…え?
*
「服を貸してくれありがとうアラジン!」
「うん!僕の小さい服しかなくてごめんよ」
男は"シン"と名乗った。
何でも、バルバッドへ向かうところだった商人で、居眠りしている隙に盗賊に身包みを剥がされたらしい。
薪を囲んでシンさんの話を聞いていたが…正直、今の彼の格好も見るに絶えない。
とりあえずアラジンの服しか無かったからそれを着てるわけだけど…
なんかもう色々ギリギリだ。うん…つまりパッツンパッツンだ。
出来ることなら今すぐモルちゃんの目を塞ぎたい。
「さっきは話も聞かずにごめんよ、おじさん…
どうも僕は砂漠越えのせいで、危険なものにびんかんになっているようだよ…」
危険なものって言っちゃったよ。
やっぱり子供から見ても怪しいんだ この人…
「ほう、君はその年で砂漠を越えたのかい?」
「そうだよ!黄牙の村のある北天山高原から、中央砂漠を越えてきたのさ!珍しい植物や生き物がたくさんいたよ!」
「そうか!いいねぇ…俺はそういう冒険譚が大好きだよ」
シンさんは感心しながらアラジンを見て、次に私を見た。
「不思議な格好をしているね、お嬢さん。何処かの民族衣装かな?」
ぎくっ
な、中々痛いところをついてくるな…
『あはは…まあ…』
枝を薪に投げて誤魔化した。
服か…出来ればバルバッドで調達したいけど…お金がなあ…
いくらなんでもアラジン達に買わせるわけにはいかないし。
うーん…悩みは尽き無いなぁ。
「未知なる土地や知識に会う高揚感は、何ものにも代えがたいね。
道を切り開くことで生まれる自信、経験、大切な仲間たちとの命がけの絆…」
不思議な人だ。
まるで、自分が経験してきたみたいに話す。
「それらを折り重ねて、自分だけの壮大なストーリーを作り上げる快感!いいねぇ冒険は!冒険は…男の夢(ロマン)だよ!」
アラジンは身を取り出してシンさんの話を聞いていた。
確かにすごくいいこと言ってるんだけど…何かしっくりこない…
あ、服のせいか。
「…あの、バルバッドへ急ぎませんか?今日中に着かないと…」
「おっと すまないね、お嬢さん!」
モルちゃんよく言った!
そう思いながら立ち上がる。
「冒険譚にはつい熱が入っしまうのだよ」
「わかる。わかるよ、おじさんのきもち!」
アラジンがはしゃぐ横で、私は見逃さなかった。
シンさんがモルちゃんを見つめているのを。
こ、こいつ まさか!
「…あの…何か?」
「ん?ああ!君のような可愛らしいお嬢さんとの出会いも旅の楽しみの一つだと思ってね!」
狙ってやがる!!
モルちゃんを狙ってやがる こいつ!
ロリコンか!?やっぱり私が二人を守らなくちゃ!!
「あ、もちろん君もだよ。民族衣装のお嬢さん」
民族衣装じゃねーよ!!!
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