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紅玉様の食事を下げた後、部屋を出ると 金色のルフが目の前を飛んでいた。
いや、飛んでいるのはいつものことだがいつものそれとは少し様子が違った。



『?…どうしたの?』



話せるわけがないけど一応聞いてみる。ルフはそのまま廊下を進んで行った。
私はそれに着いて行く。なんとなくだが「こっちに来い」と言われている気がした。



『この部屋?』



角を曲がってすぐの部屋でルフが止まる。そしてドアをすり抜けて部屋に入って行った。
かちゃ、とカギが開く音がした。何でカギが勝手に…と思ったけど考えるのをやめた。ここは不思議なことが日常茶飯事だ。
ドアノブに手をかけ、ゆっくり部屋に入る。



『……ジュダル…』



キングサイズのベッドに寝ている青年が視界に入る。
ここはジュダルの部屋だったのか。カギをかけるなんて厳重すぎない?
ベッドの傍に立って、眠るジュダルを見る。昨日見た時よりは回復しているみたい。
顔色がまだ悪いけど、傷は治っている。



『何で私をここに?』



飛び回るルフに聞くけどやっぱり喋るわけがない。
私にどうしろと?



「…っ、」



ジュダルの眉間に皺が寄った。苦しそうだ。
…魘されてる?どうしよう、起こした方がいい?



『ちょっと、大丈夫?』



手を伸ばして身体に触れた。



ピィイイ



私の手を伝って、金色のルフがジュダルの中に入っていく。
急な出来事に呆然としてしまった。しばらくしてルフの流れが止まったところで自分の手を凝視する。
な、何なんだ… 前から思っていたけどこのルフ、勝手な行動が多くない?



「…んぁ…あ?…?…お前…」



しまった。起こしちゃった。
…あれ?私 起こそうとしてたんだっけ?
目を覚ましたジュダルは寝た体制のまま私を見た。



「…お前、何でここにいんの?」

『いや、なんか…ルフが…』



気のせいだろうか。さっきより心なしか顔色が良い気がする。
ジュダルは起き上がろうとしたが、またすぐにベッドへ倒れた。



「クソ、まだ身体が言うこときかねぇ」

『安静にしておいた方がいいよ。昨日あんなに…』



言いかけて気付く。そうだ、こいつならアラジンのことを聞き出せる。
紅玉様に聞きそびれたことを聞いておこう。



『ねえ、あんたをそんな風にしたのはアラジン?それともアリババくん?』

「はあ?お前、あのチビとも知り合いなのかよ」

『アラジンと会ったの?』

「ウルセェな。質問ばっかしてんじゃねーよ」



ギロリと睨まれて何も言えなくなった。
…ここで負けてちゃダメだ。



「チッ…あのチビ、他人のジンを使って戦いやがって…」



ジン…ウーゴくんのことか。
……だとすると…他人…?



どくん、



『どうしてあんたがそのことを知ってるの』

「んなもんルフの流れを見りゃ分かるっつーの。俺はマギなんだぜ?」

『…………』

「てかお前は知ってたのか」

『…え?』

「あのジンの主がチビじゃねぇってことをだよ」



そんな言い方だったぜ?と言われて自分の言葉を思い出す。
そう、その通りだ。でも私は知らない。主とジンの関係も、ましてやアラジンとウーゴくんのことなんて何も知らない。…はずだ。
なのに、どうして…あんな口振り…
アラジンがウーゴくんの主じゃないことを、まるで知ってたみたいに…
いやだって、ウーゴくんの主は、

……ウーゴくんの主は、…?



「───い、おい!」

『!…何?』

「何ぼーっとしてんだよ。腹減ったんだけど」

『……で?』



言わんとしてることは分からなくも無かったが、あえて聞き返した。
ジュダルは寝転んだままで馬鹿にしたような視線を私に向ける。



「お前は下女、俺は神官なんだぜ?態度がなってねぇな貧相女」

『そのあだ名はやめろっつってんでしょ』

「いいから早く飯持って来いよ」



こいつマジで殴りたい!
そんな気持ちをなんとか抑え、身体の向きを変えた。
本当にどうして私はこの部屋に来たんだ。これからはルフの言いなりになるのはよそう。



「あ、リホ!」

『何よ』



不機嫌丸出しで振り向いてやった。
そういえば名前を呼ばれたのは初めてかもしれない。けれど最早そんなことはどうでもいいくらいイライラしていた。



「お前治癒魔法使えんの?さっきから魔力(マゴイ)の回復が早ェ」



まごい?…何だそれ。そういえばジャーファルさんも言ってたっけ、まごい操作が何たらって。



『…さあ?そういや さっき私のルフがあんたに移ったから、それじゃない?』



それだけ言って、私は部屋を出た。
そしてこの日の半分をジュダルのパシリとして働かされることになるのだが…
まったくもって不本意な一日だった。

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