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「リホ様」



ジュダルが消えた空を見ていると、ターニヤさんが私を呼んだ。
煌帝国の人達を迎える準備が出来たらしい。



『すいません、私何も手伝ってなくて…』

「いえいえ、その代わり明日から忙しくなりますので。リホ様はここで何を?」

『ジュダルってやつに絡まれまして…』

「ジュダル…ああ、あの神官様…」



そういえば、あいつ煌帝国の神官なんだっけ。役割はいまいち分からないけど…マギっていうのが関係してるのかも。
マギといえば、アラジンはどうしてるかな。アリババくんも、落ち込んでなきゃいいけど…



「リホ様がいてくださって良かった」

『え?』

「私一人ではとても耐えられそうにありませんでしたから」

『それって、煌帝国のことですか?』



聞くと、ターニヤさんは困ったように笑って頷いた。



「本当は、恐ろしくて仕方がないのです。銀行屋も皇女様も…あの神官様も」



この国が、バルバットが、壊されてしまうのではないかと。
ターニヤさんそう続けて、空を見上げた。



「ふふ、考えすぎですね。さあ、晩餐の準備をしましょう」

『…ターニヤさん』

「はい」

『私が守りますから』

「えっ?」

『あっ、正確には"私達"ですけど!約束です!』



慌てて訂正すると、彼女は「はい」と言って笑った。






















『つ、疲れた…』



晩ご飯の用意だけであんなに疲れるなんて…
下女が二人しかいないってのにあのブタ野郎 散々こき使いやがって!
ターニヤさんと自室に向かう廊下を歩きながら内心愚痴る。



「今日はゆっくり休んでくださいね」

『ターニヤさんはまだお仕事が?』

「ええ、皇女様がそろそろお見えに…」

『え?皇女様が来るのは明日のはずじゃ?』

「それが、先程急に「控えよ!練紅玉様のご到着であるぞ!」



外にいた兵士の声が響く。
その後ろから数人、歩いて来るのが見えた。真ん中に、赤い髪の女の子がいる。
…あれが皇女様?
隅に下がってターニヤさんの見よう見まねで頭を下げようとした時だった。
皇女様と従者の会話が聞こえてきた。



「…今日は散々だわ」

「まったくですね、姫」

「青いガキとあのバケモノ、一体何なのかしら?」



青いガキと…バケモノ?



『あ、あの!』

「リホ様!」



ターニヤさんの制止の声は聞こえないフリをして、前へ出た。
そして顔に刺青のある従者が何かを抱えているのに気づいた。
黒い。見覚えがある黒さだ。もしかして…ジュダル?



「何ですか この下女は」

「も、申し訳ありません!ここに来てから日が浅いもので……リホ様!」

『アラジンとウーゴくんに何かしたんですか!?』

「貴女…あいつらの知り合い?」



高そうな扇子で口元を隠して、目を細める。
大きなかんざしがやけに輝いて見えた。



「言っておくけど先に手を出したのはあっちよぉ?うちのジュダルちゃんをこんなにしたんだから」



もう一度ジュダルを見た。
確かに、生きてるか分からないくらいボロボロだ。
でも、絶対にジュダルが先に余計なことをしたに決まってる。
…ということは、これはアリババくんとアラジンが?



「まあいいわ。行くわよぉ」

「…お部屋にご案内いたします」



皇女様の後ろに続いて刺青のある従者、その後ろにやたらと身体のデカい黒尽くめの三人。



ピィイイ



黒いルフが羽ばたくのを、私はただ見ているだけしかできなかった。





(この胸騒ぎは、一体何なの)

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